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ドームに360度全周型映像を投影、 ソフトによって建物の更新を図る【2017年レポート】

2017.11.23~2017.11.25 | レポート

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写真:馬杉真理子
企画名アップデートプラネタリウム−実験と成果展
  • 団体名 : アップデートアーキテクツ
  • 開催日 : 2017年11月23日 (木・祝) ~2017年11月25日(土)
  • 会場 : すみだ生涯学習センターユートリヤ ドーム(旧プラネタリウム)

巨人が出現し、巨大な麻婆豆腐が大きく揺れた。
ドームにアクロバチックに広がった、360度全周型映像の様子である。

その報告に先だって、少し前置きを。
昨今、少子化の影響もあって小学校や中学校の統廃合が進み、廃校が増えつつある。そして、廃校に手を加えて改築し、劇場や展示施設、オフィスビルなどとして活用するケースも数多い。
学校は、まだいい。建物がシンプルだから、他の目的でも使いやすいからだ。
では、限られた用途の建物はどうか──。
たとえば、プラネタリウム。星空を大きく映し出すため、プラネメタリウムにはドームがつきものだ。だが、プラネタリウムが役目を終えた後、その空間はどのように活用すればいいのか?
そんな問いに挑んだのが、北川貴好が代表を務めるアート & 建築ユニット「アップデートアーキテクツ」だ。この名前のとおり、建物の更新(アップデート)をもくろむチームである。

「プラネタリウムデータブック 2015」(日本プラネタリウム協議会発行)によると、2015年10月までに日本国内に設置されたプラネタリウムは455カ所にのぼる。しかし、そのうち127カ所は目下、閉鎖されたり長期休業状態となったりしている。
そのうちのひとつが、墨田区にある。1994年12月、すみだ生涯学習センターがオープン。長谷川逸子が設計を手がけ、後にユートリヤという愛称で親しまれるこの施設には、当初からプラネタリウム館もあった。直径が18メートルもあるドームを、子どもはもちろん若者やお年寄りも見上げたものだ。

だが、やがて投影機の耐用年数が超過し、近くに東京スカイツリーも完成。この東京の新しい名所には、「コニカミノルタプラネタリウム 天空」も鳴り物入りでオープンした。
そうした事情から、ユートリヤ・プラネタリウム館は、2013年に幕を閉じたのである。
現在、かつてのユートリヤ・プラネタリウム館、現在のドームは、講演会や発表会、演奏会などに利用できる施設として利用されている。
そこで「アップデートアーキテクツ」の面々は、ドームをどう使えば楽しいかをたくらんだ。パノラマ投影ができる特殊なレンズを用い、プロジェクターでドームにさまざまな映像を映す実験を重ねた。あらかじめ撮影した映像はもちろん、カメラを用いてライブ映像を映したり、影絵に取り組んだりもした。

_dsc4315写真:馬杉真理子

そして、11月23日から25日までの3日間にわたって、「アップデートプラネタリウム−実験と成果展」を開催。各日とも5時間に及ぶ展示やイベントを実施した。
たとえば、飯田将茂はプロレスラーのような男が体操する映像を投影。ドームに巨人が広がった。西原尚と藤田龍平は影絵による人形劇を発表。背負った太鼓や笛の音色が反響し、ドームならではの音の響きを味方につけた。
また、北川貴好は麻婆豆腐をライブ中継。超巨大なシズル感を漂わせた。
さらに佐藤史治+原口寛子は、パフォーマンスを見せるとともに、
ボツネタの披露としてニコニコ動画のコンテンツを投影。
その他にも、お茶会を開催したり、カラオケやゲームなどの映像遊びができるスナックも開かれるなど、さまざまなイベントが繰り広げられた。

2017-11-25%e3%83%ac%e3%82%bf%e3%83%83%e3%83%81%e6%b8%88-105写真:金子千裕
2017-11-25%e3%83%ac%e3%82%bf%e3%83%83%e3%83%81%e6%b8%88-116写真:金子千裕

「アップデートアーキテクツ」は、今回のイベントを皮切りに、今後も活動を展開したいと望む。日本各地、そして世界各地に、星空を失ったドームが数多くある。そこで彼らは各地のドームに足を運び、現地の人たちが持ち寄った映像を映し出そうという意向だ。
これまで、廃校などの再活用は建物に改修工事を行うことで実施されてきた。その一方、このプロジェクトは、どんなコンテンツを映し出すかという、ソフトによる建物の更新である。
つまり、建物にはいっさい手を入れないで、建物に新たな芽を育む試みだといっていい。北川貴好率いる「アップデートアーキテクツ」の今後の展開を大いに期待すると同時に、その成果の第一弾に立ち会えたことを喜びたい。

新川貴詩(しんかわ たかし)
兵庫県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。現在は東京都在住、隅田川沿いに暮らしています。美術ジャーナリストとして、新聞や雑誌、Webサイトなどに文章を執筆。また、展覧会企画にも携わるほか、学校教員や編集者も務める。「隅田川 森羅万象 墨に夢」では、昨年に引き続き今年も選考委員を担当。

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