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創造的なお祭りがまちの日常を豊かにする「寺島・玉ノ井まちづくり協議会」と「北斎通りまちづくりの会」【2018年度・すみゆめ参加団体クロストーク】

企画名2018年度・すみゆめ参加団体クロストーク
団体名:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会
開催日:2019年01月07日(火)

「隅田川 森羅万象 墨に夢」通称すみゆめの2018年までの活動を振り返るため、参加団体のみなさんにインタビューするシリーズ企画をお届けします。第2弾は、これまで墨田区でさまざまなかたちでまちづくりに関わるプロジェクトを行ってきた2組から「なぜすみゆめに参加しようと思ったのか」「どのように企画が展開しているのか」などのお話をうかがいました。

 

<お話をきいた人>
牛久光次さん(NPO法人 寺島・玉ノ井まちづくり協議会)
中西てい子さん(NPO法人 寺島・玉ノ井まちづくり協議会)
富岡達郎さん(北斎通りまちづくりの会)

 

<団体プロフィール>
NPO法人 寺島・玉ノ井まちづくり協議会  http://www.teratamakyougikai.org/
素敵で魅力あるまちをつくるために、地域や人々をつなげるコミュニティ形成やプラットフォーム的な役割を目指した活動。地域の江戸野菜「寺島なすプロジェクト」、地域商店街を元気にする提言とつなぎ役を担う「商店街活性化プロジェクト」、墨田区初の本格的な農園創設を目指し地域力向上を図る「まちなか農園プロジェクト」など。メンバー構成も特定のジャンルに限定せず、幅広い年齢層を持つ。

北斎通りまちづくりの会  https://www.hokusai-dori.com
亀沢全域を対象とした地域まちづくり活動を行なっている。具体的には、一定規模の建築計画に対して地域の事業者と協議を行う「建て替え調整員会」の開催、地域の情報を伝える「まちづくりニュース」の発行、地域にゆかりのある方々を招いた「シンポジウムの開催」地域内の教育機関の授業参加、行政と地域課題に関する協議への参加、すみだ北斎美術館でのイベント協力などがある。

 

江戸をテーマに地域に新しい波を起こす「江戸に浸かる。」

NPO法人 寺島・玉ノ井まちづくり協議会(以後「てらたま」)は、墨田区の北部にある東向島地域を中心にまちづくり活動などに取り組む団体です。2016年度からすみゆめに参加し、旧向島中学校の校庭や体育館を会場としたイベント「江戸に浸かる。」などを開催してきました。

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(写真:「江戸に浸かる。」の様子)

 

牛久光次(以下、牛久):まちづくりといっても、町会、商店街組合、学童、PTAなどいろいろな活動団体があるなかで、個人的には視野を広くもってまち全体を見ていきたいというのがあります。「てらたま」は、各団体の方はもちろん、一般の方や地域外の方でも関われるプラットフォームにしたいという想いのもとで、2015年くらいに組織化しました。

中西てい子(以下、中西):私は、すみゆめにはじめて参加する前の年、2015年くらいにてらたまに参加しました。結婚して墨田区に来てからだいぶ経ちますが、近所のいろは通り商店街もだんだんお店が無くなってきたりするなかで、地域が元気になるようなことをしたいと思ったのがきっかけです。もともと看護師の仕事をしていたので、今はまちの看護師みたいな存在になれたらいいなと。

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(写真左:牛久光次さん、右:中西てい子さん)

 

牛久:すみゆめ初年度は、玉の井カフェ、まち歩きなど3企画くらいで参加して、今年度まで継続している「江戸に浸かる。」を立ち上げたのが大きなチャレンジでした。北斎が生きた江戸時代をテーマに、廃校になっている中学校を活用して、お祭りのようなコンテンツを地域の方にたくさん用意してもらって、江戸のまちをみんなで体感できる文化祭のような場にする、というのがコンセプトでした。

中西:てらたまの中でも、「そんなこと本当にできるの?」とななめに見られているような所がありましたね。

牛久:いろいろ大変でしたが、結果的にはけっこうやれたな、盛り上がったなという感覚がありました。
これまで向島で文化的なイベントというと、アーティストがいて、それを鑑賞するという感覚のものが多かったと思いますが、これは地域のみんなで一緒につくろうというアプローチなんです。1年目から児童館の協力はもらっていたが、2年目からは中学・高校の部活動的なものだとか、福祉団体の方にも参加してもらえるようになりました。

中西:年々、こんなことやりたい、という人が増えてきていると思います。1年目は屋台という形式ありきのなかで参加してくれたお弁当屋さんが、自然とこんなことをやりたい、と企画を出してくれるようになったり。普段から何となく創作活動をしている人たちが、発表の場として考えてくれるようになったり。このような機会があることで、発想を膨ませたり、実現の場にできるという感じでしょうか。

牛久:江戸というテーマをふまえて何かを創造するというハードルはありますが、地域の人が各団体の枠を超えて何か新しいことをできる場、多世代が交流できる場になりつつあると思います。新しい波を起こしていきたい。

中西:何かしたいという人たちは、基本的に否定せず受け入れていくスタンスです。日常に彩り、潤いが加わり、人生に深みが出るような機会につなげてもらえるといいですね。

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(写真:2017年「江戸に浸かる。」の様子)

 

年中行事として根づきつつある「北斎祭り」

富岡達郎(以下、富岡):北斎通りまちづくりの会は、墨田区の南部にある亀沢地区でまちづくりに取り組む団体です。北斎美術館の構想や、北斎通りを中心として地域を盛り上げる活動が進むなかで2005年に設立されました。亀沢地区に新築されるマンション等の事業者と地域住民が建設計画等について協議する建替調整協議会の開催や、2006年から始まって、2016年度からすみゆめにも参加している「北斎祭り」、まちづくりに関わる講演会の企画や広報活動などを行っています。

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(写真:「北斎祭り」の様子)

 

富岡:「北斎祭り」は2006年から毎年続いていて、亀沢地区の文化祭のようなかたちになっていますね。すみだ北斎美術館とその前に広がる緑町公園、北斎通りなどを活用したイベントです。北斎祭りを開催するにあたった出発点としては地域のコミュニケーションの機会づくり、歴史や文化の再発見、北斎美術館の開館に向けて地域を盛り上げていくといった意識がありました。

2016年にすみだ北斎美術館が開館するため、北斎祭りで少し大きなしかけをしようと考えていたところ、ちょうどその時期にすみゆめが始まりました。補助金が出ることで新しい試みに挑戦できそうなのと、他団体との連携や情報共有を求めてすみゆめに参加しました。

富岡: 北斎美術館の敷地は江戸時代後期に弘前藩津軽家の上屋敷だったという由縁があって、北斎祭りでは青森県人会「のあのあの会」の協力で弘前ねぷたに欠かせない金魚ねぷたのワークショップを10年ほどやっていたことがきっかけになり、弘前市が2017年からねぷたを出してくれるようになりました。ねぷたと共に弘前市をはじめとした青森県の方々が100人くらいで来てくれていて、迫力があります。すみゆめに参加してからは観に来る人も増えてきていて、今年度はねぷた運行だけで3,000人くらいになったと思います。

幅広い年代が体験できるワークショップや、子供や様々な団体が出演するパフォーマンス、地域の小学校や保育園による展示、模擬店など様々なかたちで参加できるコンテンツも用意していますので、この場にいろんな人が来ていて、様々なコミュニケーションが生まれています。お祭りの前後にも、お祭りを話題にした会話が生まれていたと耳にしました。年中行事として日常の一部になっていくといいですね。

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(写真:富岡達郎さん)

 

文化を継承していく、地域活動としてのお祭り

牛久:神社のお祭りとかもしっかり行われていますが、どうしても毎年、同じ役割の人たちでこなしていくイメージがありますよね。参加する人も固定化してしまい、新たに加わりにくい気がします。だから、「江戸に浸かる。」はつくり手がいい意味で変わっていく、誰でも参加できるというスタイルにしていきたい。そういったお祭りもそれぞれのまちに必要なのではないかと思います。

富岡:こちらの地域での牛嶋神社のお祭りは精神的・伝統的なものとして、将来に受け継いでいく財産ですから、北斎祭りは別の切り口を目指していくべきだと思います。亀沢はお祭り好きな人は多いですし、地域内でもそれぞれ独自にイベントもやっています。そういったなかで、北斎祭りは地域での文化祭のような、人々がゆるく交流できる場としたいです。

中西:既存のお祭りや、組織の中で必ずしも力を発揮できない人たちにもスポットを当てたいですね。そういう人たちが生活している中で、自然に楽しめるようなことが生み出せたらいい。

牛久:伝統も重要だけど、本当の意味で文化を継承していくための活動。その年ならではの、わくわくする要素のあるお祭りでありたいです。

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(写真:「江戸に浸かる。」の様子)

 

どのように活動を広げ、継続していくか

富岡:もっと地域外からも多くの方々に参加してもらいたいです。つくる側に関しては、今年度の北斎祭りですみゆめにも参加している、「ずぼんぼプロジェクト」「トッピングイースト」「キッズサポートりま」「ハレホヌハワイ」のみなさんに参加していただきましたが、現状では地域内の人が多くを占める印象はあります。

牛久:てらたまはメンバー自体にも区外の方がいたりして、地域色はそこまで強くない、というかあまり意識していませんが、地域に認めてもらいたいという感じはあります。「江戸に浸かる。」も2、3年とやっているとかなり理解や協力は得やすくなりました。

富岡:やり続けるのは大事ですよね。

牛久:アサヒ・アート・フェスティバルや向島学会のアートイベントなども行われてきた地域ですが、なかなか実際は地域の人、特に年配の人はわからない。一部の人がやっているというイメージがあったと思います。それをとっぱらえるといいですね。すみゆめは、区が関与しているということで、地域の人たちが入りやすくなっていると思います。その点では、私たちの企画はすみゆめなくしては実現できない。

富岡:すみゆめの良さは、地域のお祭りのような企画と、アートっぽい企画と両方あることですよね。せっかくだから、なるべくいろんな人を巻き込んでいきたい。「北斎祭り」は弘前市も協力的で、今の流れを継続していけると思います。もちろん、参加者が増えてきて運営上の課題や予算の問題もありますが、自分たちができる範囲で日常を豊かにする取り組みを続けていきたいです。

中西:こっちは地域の文化祭として、てらたま主導というよりは、地域の人で続けていけるかたちにしていきたいですね。

牛久:引っ張っていく力もないしね(笑)。個人がいかに創造力を発揮できるか、というのを大事にしているので大きくはできない気もします。

富岡:向島は個人で突出した活動をする人が多いイメージがありますよね。こっちの方は連帯型というか、組織型。個人ではできなくても、みんなで一緒にやろうという動きが全般的に強い。亀沢は特にそんな感じだと思います。

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(写真:ねぷた運行の様子)

 

クロストークはここまで。

それぞれ墨田区の異なる地域で活動する2団体。新たな文化や人間関係を生み出していくという視点で、それぞれの「お祭り」のあり方を目指していることがよく分かりました。個人が強い向島、連帯・組織型の亀沢という違いが見えてきたのも発見でした。日常を豊かにする、それぞれの取り組みが引き続き楽しみです。

 

編集:橋本誠(ノマドプロダクション)
2019年1月7日事務局(公益財団法人墨田区文化振興財団 内)にて収録

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