HOME / レポート / 自宅で作ろう 江戸料理【2016年レポート】

自宅で作ろう 江戸料理【2016年レポート】

企画名江戸料理講習会「北斎夢食百珍・北斎が食べたかもしれない江戸料理を創る!」
団体名:寺島・玉ノ井まちづくり協議会・玉ノ井カフェ.
開催日:2016年09月24日(土)
会 場:東向島・玉ノ井カフェ. 墨田区東向島5-27-4

9月24日(土) に、東向島にある『玉ノ井カフェ』で江戸創作料理講習会が開催されました。

%e7%8e%89%e3%83%8e%e4%ba%95%e3%82%ab%e3%83%95%e3%82%a7

東向島は、江戸時代、花街でした。小説家、永井荷風の「墨東綺譚」に登場する場所です。

お店にも、永井荷風ゆかりの物が飾られています。お店では、料理講習会のほか、手芸や俳句の会などのワークショップも開かれています。

9月から11月、全3回に渡って、「北斎が食べたかもしれない、江戸料理を創る!」と題して、講習会が開催されます。第1回は「江戸百珍料理」、。第2回は、「江戸の居酒屋・屋台料理」。第3回は「江戸のお菓子と薬膳茶」。講師は、恵比寿にある写真集食堂「めぐたま」で料理を担当し、江戸料理のイベント等を行っている おかど めぐみこ 先生です。

 

東向島は、江戸時代に寺島村と呼ばれ、「寺島ナス」という江戸東京野菜の栽培が盛んだった地域でもあります。関東大震災以降、都市化が進み寺島ナスは消えてしまいましたが、本イベントを主宰している寺島玉ノ井まちづくり協議会では、寺島ナスをつかったまちおこしとして活動を行っています。

 

今回のメニューはこの寺島ナスもメニューに入った3種類です。
「寺島ナスの鉄火味噌」
「豆腐麺」
「たまごふわふわ」

「寺島ナスの鉄火味噌」は、奈良時代から使用している調味料の「ゴマ油」を多く使用して、味噌・お酒・みりん・水で味を整えます。ナスを焼く時は、弱火で唐辛子を炒めてからナスを強火で炒めることがポイント。寺島ナスは普通のナスとは違い、皮が厚く身がしまっているため、炒めても大きさが変わらず、調味料を加えて炒めてもナスの甘さをしっかりと感じました。寺島ナスは、6「売られていたら是非購入したい」と参加者全員が寺島ナスのファンに! お好みで唐辛子を加えたり、甘くしたりとアレンジも可能。簡単調理でおつまみにも良い一品です。

%e5%af%ba%e5%b3%b6%e3%83%8a%e3%82%b9%e3%81%a8%e9%89%84%e7%81%ab%e5%91%b3%e5%99%8c%e4%bd%9c%e3%82%8a

「豆腐麺」は、木綿豆腐と細かく刻んだ小松菜の炒めそうめん。このメニューは江戸時代の書籍「豆腐百珍」に書かれているメニューの1つ。刻んだ小松菜を塩でもみ、ゴマ油と醤油だけで味付けをするシンプル料理。ポイントは、そうめんを半分固めにゆでること。そうめんの歴史は古く、奈良時代から七夕祭りで主に食べられてきました。江戸時代半ばまでは、お醤油がなかったため、煎り酒(いりざけ) を使用して作っていたとのこと。煎り酒は、日本酒に梅干しを入れて煮切り、その中に昆布と鰹節と干し椎茸を加えた、お醤油より味があっさりとした調味料です。室町時代頃に考案され、お醤油がつくられるようになってからは、使われなくなってしまったそうです。材料を聞くと、家にあるものばかりなので、本格的に作るともっと江戸庶民の味を感じられそうです。小松菜は、徳川吉宗公は鷹狩りの時に西小松川で冬菜を添えた餅の澄まし汁を食べて以来、好物となって、この地名から小松菜と命名されたといわれています。江戸東京野菜としては、世田谷の伝統小松菜が登録されています。豆腐麺は、混ぜる料理のため、沖縄の「チャンプルー」のような料理でした。

%e8%b1%86%e8%85%90%e9%ba%ba%e4%bd%9c%e3%82%8a


「たまごふわふわ」は、江戸時代の料理本、「玉子百珍」に記載されているメニューの1つ。江戸時代は卵が貴重とされていたため、ふわっと仕上げて量増しした料理です。静岡県の袋井で袋井宿大田本陣の朝食に出されていたとか、徳川家光公が後水尾天皇をおもてなしした料理との説があり、今では東海道で流行しています。出来上がりは、ふわっとしたシフォンケーキのよう。卵を泡立てるために、江戸時代は「ささら」という竹の先を細かく割った道具を使用していました。今の時代のように電動泡立て器はないため、大変な作業だったと思います。泡立て方で仕上がりが決まると言うことで、ツノが立つまでしっかり泡立てると良いそうです。そこに、お出汁をかけていただきます。参加者からは、「離乳食によさそう」「食欲のない時に良い」と、声が上がりました。

%e3%81%9f%e3%81%be%e3%81%94%e3%81%b5%e3%82%8f%e3%81%b5%e3%82%8f

江戸時代の食事は、ご飯を一日に4合食べていたと言われ、野菜・魚・芋・大豆・きのこを主にバランスよく摂取し、調味料には胡椒・山椒・わさび・唐辛子・柚子・ネギを使い、複数の香辛料を組み合わせていました。濃い味付けが好まれていて、料理本にも特に分量の記載がされていません。適量・目分量という部分で、好みが尊重されて、人に対する気持ちに余裕がある時代だったようです。味付けを薄味にすることで、現代でも楽しめる食事になります。簡単に短時間で作ることができる点も、食材を余すことなく使うのも魅力的でした。

 

次回の10月22日(土)に開催予定の「江戸の居酒屋」。こちらも興味深いです。今回の講習会とはまた違った面白さと発見がありそうです。

玉ノ井まちづくり協議会の髙木新太郎先生ご案内の街歩きイベントが9月28日(終了)と10月16日に開催されます。北斎の「富嶽三十六景」に描かれている墨田区の景色は3個所あります。「関屋の里」「御厩川岸(おんまやがし)」「本所立川」。玉ノ井カフェのコースもあります。街歩きイベントと合わせて参加すると更にが深まりそうです。

 

レポーター:小柳知子(こやなぎ ともこ)

子供の頃から食文化や伝統工芸に興味を持ち、それらに検定があることを知り、フードアナリスト、江戸東京野菜コンシェルジュ、地域観光特産士3級を取得。それをきっかけに江戸に興味を持ち、ゆかりの地や美術館などを日々巡っている。取材としては、日本伝統文化振興機構の文化レポーターやフードアナリスト、地域PRサポーターとして記事を書いている。☆墨田区は江戸東京野菜の“寺島ナス”があります。是非一度お試し下さい。

  • 0
  • 0
    Twitter