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すみゆめ踊月夜(後編:うらないうら道)【2022年イベントレポート】

Photo: Ryohei Tomita
企画名すみゆめ踊月夜
団体名:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会
開催日:2022年11月5日(土)、6日(日)
会 場:隅田公園そよ風ひろば ほか周辺エリア

隅田公園は広い。『すみゆめ踊行列』の櫓が組まれた「そよ風ひろば」エリアにはドリンクバーやハンドマッサージ、台湾&レトロゲームなどの出店が並ぶ。南側には東武線(スカイツリーライン)の高架下複合商業施設「東京ミズマチ」が隣接し、お店目的の人も入り混じる。その傍らでは、すみゆめの配信企画「すみだ川ラジオ倶楽部」も公園の様子を実況しながら公開収録。北側には芝生エリアが広がり、子どもと遊ぶ人、カップルでくつろぐ人、ペットと散歩をしている人も多い。奥の方には牛嶋神社があり、池や樹木が生い茂る場所もある。

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この北側に点在する形で行われたプログラムが『うらないうら道』だ。企画・構成は、これまでにもすみゆめをはじめ、カフェ・区役所・美術館など各地の様々な環境に合わせたパフォーマンスプロジェクトを手がけてきた居間 theater。〝占い〟をテーマにした、6組のアーティストによる作品を体験できるということで、『すみゆめ踊行列』と並行して楽しんだ。

まずは芝生エリアの入口に設けられた「案内所」でオリジナルのZINEを手に入れる。各所での参加パスと案内図を兼ねた内容だ。

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▶︎居間 theater+荒木知佳「せんのおまじないと☆」

テントの中に誘われ、自分の住んでいる場所から、行ってみたい場所(架空の場所でも可)までを自ら線でカードに表現。占い師(!?)が待つブースでそれを渡すと、図柄化したものを簡易タトゥーにしてもらうことができた。

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▶︎今和泉隆行|地理人「いざないの館」

転居・移動・地理・土地と書かれたサイン、土地の風景がプリントされたタロットカードなど小道具のつくり込みが細かい。方位とサイコロの目を元にした距離から、向かってみてはどうかという土地の情報を占ってもらえる。私は「北東・6」で茨城県の土浦。地図を一緒に眺めながら、城跡があったり、近頃はサイクルルートや拠点が整備されていたりと、歴史が感じられつつも新しい動きがあるので楽しめる。個人的には、流行らなくなってしまった霞ヶ浦の遊覧船もおすすめだとのこと。

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そして私も土地勘のある筑波や取手あたりの様子まで話が広がる。地理人と言えば実在しない架空の都市を詳細に描く「空想地図」で知られているが、地図を眺めながら次々に出てくる会話から、実際に様々な土地のフィールドワークもしていることをうかがい知ることができて感嘆した。いや、そこにはもしかしたら地図を読み込んで話している情報も含まれているのかもしれないが、それはそれでも面白いし、彼の知見や技術を活かしたなんという「占い的」なコミュニケーションではないだろうか。

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▶︎たくみちゃん「蛇と梯子とディスティニー」

100マスのすごろくに挑戦した後に、ゴールの数字にちなんだものを公園で自ら見つけてくる。それを元にたくみちゃんが絵を描いてくれるという流れ。すごろくは「○個戻る」の罠がたくさんあるので、先に挑戦を始めたと思われる人たちがたくさんいて少しカオス状態。途中であきらめる場合はその数字にしてもいいとのことだったのですが、なぜか罠には一度しかかからず。自販機で「100%」オレンジジュースを見つけて絵を描いてもらいました。

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▶︎福田毅「うらない分福」

決められた場所ではなく、たぬき姿の福田さんを見つけて捕まえるという形式。思いついた3つの数字を元にした「カードのようなもの」占いだ。トレーディングカード、動物カルタ、名刺、コンパクトミラーなどから、占って欲しい内容を導いていく様が面白い。今後を悩んでいる仕事についてお願いしたところ、結論は「ちとせあめ(千歳飴)でひともうけ」だった。

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▶︎遠藤麻衣「蒼のバーニング・マンダラー」

指定された場所で瞑想のポーズをとっていると啓示がある(女性が近づいてきて、カードをくれる)という形式。これはすぐに来てもらえるとは限らないので、なかなか恥ずかしい(実際、1度目は痺れを切らしました)…。

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そう考えると、公園にはこのZINEを手にしている人の方が少ないわけで、テントの張られたブース以外で展開されているたくみちゃんのすごろくや、たぬきの福田さん、なぜか瞑想している人がいる風景はかなり奇妙に見られているに違いない。前向きに捉えれば、直接参加をしていなくても楽しめる状況が生まれている。

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▶︎しば田ゆき「こひみくじ」

飲んだコーヒーの味について書いたシートが、「今すぐ」飲みたい→出逢い「今すぐ」、「香ばしくてさっぱり」した香り→縁談「香ばしくてさっぱり」などと変換されておみくじになっている。頑張ろうと思いました。

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▶︎賑やかな「祭り」と密かな「遊び」

「神社の気配とか、夜の公園とかのあやしげな雰囲気に触れられたら」「お客さんのあり方によっても、やる側のパフォーマンスが変化していく。その相互関係のセッションが生まれると面白そう」と居間 theaterの稲継美保さんは語っていた。

隅田公園の使い方インタビュー「誰かと未来を占う時間をつくる」より

賑やかに行われていた『すみゆめ踊行列』がみんなで一緒に楽しめる表の顔だとしたら、場所も点在型で、日没後は怪しげなライトアップの元にひっそり行われていた『うらないうら道』は言わば裏の顔。そこにはアーティストが関わることで生まれた「遊び」的な要素が多くあったが、1対1を中心としたコミュニケーションからは、もしかしたら切実さをもって何かを持ち帰った参加者もいたかもしれない。

「すみゆめ踊月夜」は、賑やかな「祭り」と密かな「遊び」が共存する2日間だった。

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橋本誠(はしもと まこと)
美術館・ギャラリーだけではない場で生まれる芸術文化活動を推進する企画・編集者。東京文化発信プロジェクト室(現・アーツカウンシル東京)を経て、2014年に一般社団法人ノマドプロダクションを設立。NPO法人アーツセンターあきた プログラム・ディレクター(2020〜2021年)。編著に『危機の時代を生き延びるアートプロジェクト』(千十一編集室/2021)。

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