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お天道様も味方に大盛況!「すみゆめ踊行列」【2017年レポート】

企画名すみゆめ踊行列
団体名:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会事務局
開催日:2017年08月27日(日)
会 場:墨田区内各所

前回の寄合で参加者の皆さんが作ったてるてる坊主の効果でしょうか。イベント「すみゆめ踊行列」当日は、雲があるものの、ときどき太陽が顔を覗かせてくれ、イベント日和になりました。

 今年の「すみゆめ踊行列」は、昼の部の「すみゆめフィールドワークス」と夕方の部の「すみゆめオープニングパーティー」の2部構成。
お昼のフィールドワークスでは7つのプログラムが墨田区内各所で開催され、その中の「隅田川の水を飲むにはどうしたらいいの?」に参加してきました。
会場はJR両国駅から徒歩2分ほどのMELTING POT。元メリヤス工場をリノベーションしたスペースで、「環境について考え学び、未来に残す環境を考える」をテーマにした おしゃれな環境ショールームです。ちなみに、墨田区は明治以降メリヤス工場が集中していた地域なのだとか。
プログラムの船頭役は、MELTING POTの運営にも携わり、区内で環境事業にまつわる工業薬品を製造販売する島田商店の嶋田淳さんと、水質検査を専門とするミズラボの吉岡聖子さん。白衣に身を包んでの登場です。
はじめに嶋田さんが「水はどこから来ているのか」をスライドを交えながら解説。浄水場でどのようにして汚れた水をきれいにしているのかを教えてもらいました。
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そして実際に、その細かいプロセスを体験してみることに。まずは水道水を入れたビーカーに園芸用の土を入れて泥水をつくります。匂いをかいでみると、雨上がりの土の匂いのよう。これは、吉岡さんいわく、「中にある細菌系の匂いが上がってきている」とのこと。
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次にこの泥水から泥を取り除くために、凝集剤を使います。スプーン2杯分の凝集剤を入れて30秒ほどかき混ぜると、不思議なことに泥の部分と水の部分が分離してきました。川の水についても浄水場でこの処置が行われるのだそうです。
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さて、この泥が沈んで分離した泥水から、どうやって泥を取り除くのでしょう? 嶋田さんが子ども向けのワークショップでこの質問をすると、「上水だけ吸い取る」「大きな網でこす」といったユニークな回答があるのだとか。答えは、「砂利を使ってろ過する」。浄水場でも同じ方法が使われているといいます。これで泥水から泥は取り除けましたが、まだ土の匂いは残っているもよう。
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そこで次に、より透明度の高い水にしつつ、匂いをとる作業を行います。ここで登場するのが活性炭。ヤシ殻や石炭などを700~1000℃くらいの水蒸気で焼いたもので、小さな孔が多数あるのが特徴です。この孔が匂いや色を吸着してくれるのだそう。今回使用するのは木のおがくずを焼いた粉末活性炭。ティースプーン1杯で東京ドーム1個分の広さに相当する表面積があるというので、驚きです。ゆっくり、じっくり、まるでコーヒーをいれるかのように粉末活性炭でろ過していきます。
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 すると、きれいな透明の水になりました。匂いもほとんど無臭です。なんと赤ワインや醤油ですら透明にしてしまうという活性炭。目の前で嶋田さんが赤ワインを活性炭でろ過してくれたところ、本当に無色透明になってしまいました。アルコールも抜けてほぼ水になるそう。活性炭パワー、恐るべしです。
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 同様のプロセスを隅田川から汲んできた水にも施し、煮沸消毒。飲料水としての基準を満たしているのか、吉岡さんが検査した結果を発表してくれました。残念ながら、飲料水としての基準はクリアしていないものの、51ものチェック項目が設けられていることに、まず驚きです。それらのチェック項目の中で注目してもらいたいのが、洗剤やシャンプーなどの泡立ちをよくする「陰イオン界面活性剤」の値とのこと。今回の検査で基準値以内ではあったものの、ゼロに近いことに越したことはなく、この値を減らしていくことが川の再生にもつながっていくといいます。
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そこで、私たちのライフスタイルを界面活性剤がなかった時代、江戸のころのものに近づけていけばいいのではないかという提案がなされました。嶋田さんのリサーチによれば、江戸時代には体は米ぬかで洗い、洗濯物にはカマドから出た灰の灰汁を使っていたそうです。
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 こうしたレクチャーを受けて、最後に「隅田川の水を汚さないためにできること」について参加者全員で考えることに。「洗剤に頼る生活が当たり前になっているけど慣れの問題かも」「泡が立たなくても実はキレイになっていることを理解しないといけない」「界面活性剤を使っている洗剤に対して税金をかけて川を汚しているという意識を植え付け、その税収で川を浄化する設備をつくる」「界面活性剤が含まれる洗剤にはマークをつけることを義務化する」などなど、色々な意見が飛び出し、プログラムを終えました。
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フィールドワーク終了後は、別会場で行われていた「天ぷら油で墨田を巡る!バスツアー」の皆さんと合流し、天ぷら油で走るバスに乗り込んで「すみゆめオープニングパーティー」の会場、墨田区役所前のうるおい広場&隅田川テラスへ。「天ぷら油でバスがちゃんと走るの?」とちょっぴり疑っていましたが、言われなければ燃料が天ぷら油だとはわからないほど、乗り心地は問題なしでした。
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 「すみゆめオープニングパーティー」の会場に着くと、「ヤムチャスミダ」で墨田区内の名店の味を堪能している方々もすでにチラホラ。隅田川を目の前に、心地いい風に吹かれて美味しいものに舌鼓なんて、贅沢な休日です。しばらくすると、隅田川テラスのステージでショーが始まりました。
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ステージに後ろ髪をひかれつつも、昼の部のフィールドワーク参加者によるアフタートークへ。ヨネザワエリカさんを進行役に、それぞれがフィールドワークで得たもの、そこから未来に向けて描く「夢」を共有していきます。皆さんが語る「夢」から、充実したフィールドワークだったことがひしひしと伝わってきました。我らが「隅田川の水を飲むにはどうしたらいいの?」からの参加者・大沼さんは、船頭役の嶋田さんと同じ「隅田川で泳ぐ」という夢を掲げ、会場からは「おおー」という驚嘆の声。嶋田さんの思いがしっかりと届いた瞬間を目撃したような気分でした。
各フィールドワークの様子は、参加者がレポーターとなってまとめた新聞として「すみゆめ踊行列」のエンディングで配布されたました。
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日が沈むころには、DJパフォーマンスやスティールパンの生演奏で隅田川テラスのステージは大盛り上がり! 見ている人たちも思わずリズムに乗って踊りだしてしまうほど。まさに“踊行列”が出現し、大団円を迎えて「すみゆめ踊行列」は幕を閉じました。

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レポーター:岩本 恵美(いわもと えみ)

東京・下町生まれ、下町育ちのライター・編集者。Webメディアや新聞紙面の制作に約10年携わり、2016年よりフリーランスに。アートや音楽などカルチャー全般が好きで、食わず嫌いのない雑食系です。昨年に引き続き、彩り豊かな「すみゆめ」を生き生きとレポートしていきたいと思います。

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