すみゆめが始まった2016年から現在まで、秋のメイン期間に多様な催しを行うだけではなく、月1回のペースで地域で表現活動を行う人たちとすみゆめ参加団体をつなぐ場として「寄合(よりあい)」を開催しています。
寄合はプロジェクトに関わる人たちやすみゆめに関心のある人たちであれば誰でも主体的に参加・発言できる場としてひらかれています。
主に公募によって選ばれたプロジェクト企画の担い手が中心に、それぞれの企画の進捗状況を報告する中で、運営上の困りごとを話し、お互いの経験値を共有しています。地域の様々な活動拠点を会場にしてその存在を知る機会としたり、参加者同士の出会いの中でコラボレーションが生まれるなど、様々なつながりを生み出してきました。
2024年度は、地域内外のゲスト講師も招きながら、アートプロジェクトの運営に関する様々な学び合いを集中的に行いました。
例年6月頃に、公募によるプロジェクト企画が決まると、その年の寄合がスタートします。これまでのすみゆめにも参加したことのある方もいれば、初めて参加する方もいます。それぞれの普段の取り組みと、今回のすみゆめで挑戦すること、人や場所を探しているなどの情報を投げかけることで、必要な情報が集まってくることもあります。
地域やすみゆめの事情に通じている人からは「あの人に相談するといいのでは?」「以前行われたあのイベントが参考になりそう!」と情報が寄せられたり、得意なことのある方には「これを手伝って欲しい」と声がかかったり。事務局が同様の助言や紹介を行うこともありますが、こうした場でお互いの活動や特性を知り合うことで、自然に情報交換が行われたり、声をかけるきっかけが生まれたりするのが寄合のいいところです。すみゆめは、このようなゆるやかなネットワークの中での相互扶助が多く生まれています。
それぞれが企画を進めているだけではなかなか知ることのない、勉強会的要素のある回では、今後の活動のヒントになるようなテーマを設けています。2024年度は「道路や公園などの公共空間活用等に関するテクニカル面の相談会」「地域資源の棚卸しをする会」「記録と活用/アンケート」などがテーマになりました。ゲストを招いた会も全4回開催しました。以下で簡単にレポートします。
創作の現場でより良いコミュニケーション環境をつくる
1人目のゲストは、アートの現場で通訳・翻訳を行うアート・トランスレーターにとどまらず、異なる文化的背景を持つ人々が協働する創作の現場でコミュニケーションディレクター等としても活躍する田村かのこさんです。テーマは「コミュニケーション」。
例えば政治・検閲・ハラスメントの問題などが起きた時に、「最近では展覧会やプロジェクトそのものがどのような方針で運営されているのか、ということが問われて、それに参加していること自体が評価に影響することも出てきた。アーティストや作品が良ければOKということでは無くなってきた。だからこういったことも考える必要がある」と田村さん。「とは言え正解があるわけではないので、ハラスメントを防止しよう!と身構えるよりは、創作の現場でより良いコミュニケーション環境をつくろう!と前向きな気持ちで取り組むのが大事」と語り、ご自身のこれまでの経験や、参加されている「表現の現場調査団」の活動を通して見えてきたことなどを共有いただきました。
例えば政治・検閲・ハラスメントの問題などが起きた時に、「最近では展覧会やプロジェクトそのものがどのような方針で運営されているのか、ということが問われて、それに参加していること自体が評価に影響することも出てきた。アーティストや作品が良ければOKということでは無くなってきた。だからこういったことも考える必要がある」と田村さん。「とは言え正解があるわけではないので、ハラスメントを防止しよう!と身構えるよりは、創作の現場でより良いコミュニケーション環境をつくろう!と前向きな気持ちで取り組むのが大事」と語り、ご自身のこれまでの経験や、参加されている「表現の現場調査団」の活動を通して見えてきたことなどを共有いただきました。
2人目のゲストは、舞台芸術に関わる制作等を行う株式会社プリコグでプロデューサー/エディターとして仕事をする篠田栞さん。テーマは「アクセシビリティ」です。篠田さんは、障害のある方が作品の鑑賞をする際に必要になる情報保障、障害のある方が作り手に加わる際に必要なコミュニケーション環境づくり、それらを通して得た知見を普及し社会化する観点などで事業を担当されているそうです。
例えば情報保障に関して言えば、「扉が開いた」という映像の表現につける字幕も、伝えたいことが「扉が開いた後の沈黙」であれば、直訳的にではなくて、工夫する必要があること。チラシやウェブサイトの制作で気をつけるべきこと。障害のある方にも来て欲しい、環境を整えていると主催者が考えていたとしても、そもそも対象者にその情報が伝わっていないと来てもらえないこと。障害の有無に関わらず、劇場などへ足を運びにくい状況にある方もいることなど。課題意識と共に、具体的な取り組みの事例もお話しいただきました。
「完璧にできることは少ないけど、その時々のリソースでできることはあるはず」と篠田さん。参加者からは、子ども連れの方が来やすい環境をつくる配慮についての話題なども寄せられました。
3人目のゲストは、普段から墨田区をはじめとして各地でアーティストやミュージシャンらと共にイベントを多く手がける清宮陵一さん。テーマは隅田川の河川空間の活用です。
事例としては、一般公募の200名とミュージシャンが荒川放水路の荒川ロックゲートで演奏をした「Arv100(アーヴ・ワンハンドレッド)」、和楽器集団・切腹ピストルズが隅田川全長23.5kmを練り歩きパフォーマンスした「隅田川道中」、コロナ禍でほとんどの企画がオンライン開催となった「隅田川怒涛」などを紹介いただきました。
企画の切り口もそれぞれ魅力的ですが、どのように許可申請をしているという点にも話題がおよびます。隅田川の河川空間であれば、東京都の建設局の所管事務所へまず相談へ行くそうですが、隅田川道中のように所管が複数におよぶ場合もあること。船を使うのであれば、それに関わる申請が発生することもある。交通安全や通報の懸念に関わることは、警察にも相談へ行く。近隣町会へ挨拶に行くと、興味を持って当日足を運んでくださることもある等。事務局からも、すみゆめでも道路や公園の使用で大規模な占有ではなく、小規模で動き回るパフォーマンスであれば、撮影許可という形にすることも多いといった知見。参加者からも、隅田川の防潮堤「カミソリ堤防」を使った「隅田川を眺めるプロジェクト」の経験談が共有されました。
4人目のゲストは、すみだクリエイターズクラブ(クリクラ)の三田大介さん。墨田区関係の会議室が会場となることの多い寄合ですが、この回は2024年10月にオープンしたばかりのカフェ/レンタルスペース「ノウドひきふね」が会場となりました。地域にひらいた作業スペースやシェア本棚などがあり、東武スカイツリーライン曳舟駅前の便利な立地です。
クリクラは、墨田区で生まれたクリエイターのネットワークで、2023年に活動開始から10周年を迎えました。すみだ愛のあるグラフィックデザイナー・WEBデザイナー・コピーライター・写真家・イラストレーター・映像作家・身体表現家・プロダクトデザイナー・建築家・音楽家などクリエイティブ分野で多様な専門性をもつ方130名以上が所属していて(2024年現在)、それぞれのプロフィールをウェブサイトで紹介。随時問い合わせに対応して制作物の相談を受けつつ、自主イベントを開催したり、毎月のようにメンバーが集まる機会を設けたりしているそうです。
「組合のような活動なのだけど、法人化はせずにできるだけお金が動かない形で運営しています。顔が見える関係がメンバー間でできているということと、たまに行うイベントで活動のアピールができているというバランスがいいのかもしれません。制作の仕事が発生した時に、仲介料を取るようなことはしていなくて、契約上必要な時は法人を持っている方にフリーランスの方と組んで請け負っていただいたりしています。」と三田さん。
この回のテーマは「持続可能な活動」でしたが、三田さんとしても一部のメンバーに運営の負担が偏ってしまうなどの悩みを抱えながら活動を続けているそうです。寄合の参加者からは、ご自身がパフォーマーでありながら、裏方の仕事もしなければいけないバランスに悩まれている点などが話題にあがりました。また、クリクラに所属しているようなデザイナーの方と、チラシの制作などで仕事をする方も多く、その制作プロセスに関する話題でも会話が盛り上がりました。
すみゆめのメイン期間終了後の1月には、ゲストなし、ノンテーマでそれぞれの活動や寄合での学びを振り返る回を設けました。そして2月には、プロジェクト企画の採択団体12組全てと審査員として関わった4人のゲストが集まり、公開で活動報告会を開催しました。
すみゆめは、同じ地域の中であっても同時期に企画が行われることが多いので、参加団体が他の企画に足を運べないこともあります。それぞれの言葉で企画の手応えや気づきなどを語ることが、活動の様子を伝え、自らの振り返りにもなることはもちろん、企画に足を運んだゲストの方からは感想や次につながるアイデアが出ることも。それらが、場を共有する全ての参加者にとっての学びとなり、また次の年度のすみゆめにつながっていきます。
墨田区では、2026年度に地域力を活かした「総合的芸術祭」の開催を予定されていますが、すみゆめにおける寄合は、まさにその地域力を文化的に高める場になりつつあります。緩やかな場を継続的に設けることが参加者の関係性を紡ぎ、引き続き、経験や知見を持ち寄るプラットフォームとしても機能することを狙っています。
執筆・編集:橋本誠、岡田千絵
