雨にも負けない北斎祭り【2017年レポート】
2006年から始まった「北斎祭り」は今年で12回目。当日は、残念ながらあいにくの雨模様でしたが、それでも年に一度のお祭りを楽しみにされていた多くの方々で会場はにぎわっていました。
日中は各種ワークショップやショーなどを開催。「北斎メダルづくり」や「牛乳パック行燈製作」など、参加型のイベントが盛りだくさんです。
中でも、「金魚ねぷた製作」は毎年人気の定番イベントなのだそう。雨でなければ、すみだ北斎美術館前の緑町公園で行われる予定でしたが、亀沢三丁目町会会館に会場を移して行われました。
金魚ねぷたは、津軽地方の夏祭りではおなじみの工芸品。東京青森県人会・のあのあ会の皆さんの指導のもと、金魚ねぷたに彩色を施していきます。ぼかしの技術まで丁寧に教えてくれ、どの金魚ねぷたも仕上がりは上々。本来、金魚の身体は赤の彩料で塗っていくとのことですが、北斎祭りでは参加者の皆さんが好きな色を選べるようにしているそう。色とりどりの金魚ねぷたが並ぶ光景は、見ているだけで何だか楽しくなってきました。
江戸時代、北斎通りのあたりには弘前藩津軽家の上屋敷があり、北斎が津軽家のために屏風絵を描いたといういわれもあったのだとか。そんなご縁から、このイベントも始まったといいます。
実は北斎と弘前のゆかりは、まだあります。江戸時代、弘前の藩士たちは当時流行っていた浮世絵本を江戸土産として故郷に持って帰っていたそうです。その中には歌川国芳や北斎の門下である葛飾戴斗らの本も。明治時代になり、弘前の絵師たちはそれらの浮世絵をもとに、ねぷた絵を生み出したといわれています。遠い北の地にまで、北斎を祖とする葛飾派の画風が伝わっていたのです。
そんな弘前との縁深さから、北斎まつりではねぷたにまつわるイベントが多数。すみだ北斎美術館講座室では、「ねぷたと北斎」と題したトークショーや津軽錦絵作家の三浦呑龍さんによる生ねぷた絵描きも開催されました。
ねぷた絵の制作過程を見学できるのは貴重な機会。多くの人がじっくりと見入っていました。大きな和紙に躊躇なく絵柄を描きこんでいく様は、ずっと見ていても飽きません。次々に彩色され、徐々に武者や龍に命が吹き込まれていきます。今にも絵から飛び出してきそうなほど、迫力満点でした。
日が暮れるころになると、北斎祭りの目玉である「弘前ねぷた運行」がいよいよ始まりました。降り続く雨の中、弘前から来た約70名の担ぎ手と囃子方と共に、弘前ねぷた3基が大横川親水公園噴水広場に登場。北斎通りを西に向かって、「ヤーヤドー」の掛け声を上げながら進みます。
最初はまばらだったお客さんも、掛け声に呼び寄せられるかのようにだんだんと増えていきました。時折、ねぷたを回転させたり、横に揺らしたりする動きもあり、勇ましく練り歩いていく姿には圧倒されます。
車いすのお年寄りがねぷたを見て嬉しそうに手をたたく光景に、ねぷたには見ている人に元気を分け与えてくれるような力があるのだと感動。思わず胸が熱くなってしまいました。
到着地点であるすみだ北斎美術館の辺りまで来るころには、すっかり日も落ちてライトアップされたねぷたがより一層幻想的に。勇壮華麗なねぷた運行は、北斎祭りのフィナーレにぴったりのイベントとなりました。
後日、11月11日(土)には、雨のため順延となっていた「灯りのフェスティバル」も開催。会場となった大横川親水公園噴水広場には、先日のワークショップ「牛乳パック行燈製作」で作られた行燈をはじめ、色も形もさまざまな行燈が集結しました。あたりが薄暗くなり始めたころ、参加者が一つ一つの行燈に灯りを灯していくと、噴水広場はいつもとは違った雰囲気に。通りを行き交う人々も足を止め、ひと時だけの幻想的な景色に見入っていました。
残念ながらどちらも見逃してしまったという方は、来年の北斎祭りにぜひご期待ください!
レポーター:岩本 恵美(いわもと えみ)
東京・下町生まれ、下町育ちのライター・編集者。Webメディアや新聞紙面の制作に約10年携わり、2016年よりフリーランスに。アートや音楽などカルチャー全般が好きで、食わず嫌いのない雑食系です。昨年に引き続き、彩り豊かな「すみゆめ」を生き生きとレポートしていきたいと思います。