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3日限り、夜の水辺の新しい風景「隅田川ディスコ with ミラーボールカー」【2018年レポート】

企画名隅田川ディスコ with ミラーボールカー
団体名:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会、墨田区、株式会社KADOKAWA
開催日:2018年11月23日(金)~11月25日(日)
会 場:隅田川テラス(吾妻橋船着場付近)、墨田区役所前うるおい広場

11月も下旬になり、17:00をまわると辺りはすっかり暗くなる隅田川。浅草駅方面から吾妻橋を渡っていくと、ひと際目立つ大きなクレーンの乗った台船が作業をしているのが目に入ってきました。クレーンが吊り下げているのは、今日のイベントの目玉作品、アーティストの西野達さんによる《ミラーボールカー》です。

この日は3日間続いたイベントの最終日。隅田川テラスでは、たくさんの人々が17:30からのクロージングトーク、18:00からのDJタイムとミラーボールカーの点灯を待っていました。川辺のステージを前にして、後方のうるおい広場には屋台も出され、法被を着たスタッフに囲まれた現場はさながら少し遅い秋祭りのような雰囲気でした。

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時間になると、ステージ上には西野さん、12月中旬から同じく隅田川で作品公開を予定しているアーティストの鈴木康広さんが登場。続いてラジオDJ・コメンテーターのレイチェル・チャンさんも司会で加わり、トークがスタートしました。

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まずは西野さんが、これまでの自身の作品について説明。代表作である《ザ・マーライオン・ホテル》(2011) などを始めとするシリーズは、まちなかで目にする銅像の特徴に注目した際のインスピレーションが根底にあるそうです。除幕式にはたくさん人が来ても、そのあとは忘れられてしまいがちな銅像を、アートによって環境を変えることで、その空間を活性化させる意図があることが明らかにされました。

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今回の舞台は隅田川の墨田区側。いいところだけれども、観光的には対岸の台東区・浅草側ばかりが目立っていると西野さんは感じたそうです。そこでこの作品を通して、「墨田区側にもすみずみまでミラーボールの光を届けたい」と展望を明らかにしました。

その後、鈴木さんが隅田川での運行を予定している《ファスナーの船》の説明などを挟みつつ、なぜ車なのかという話題に。西野さんにとって車は、人類の発展を象徴するものとして用いているそうです。かつて水運が要だった時代は、この隅田川にも多くの船が行き交ってましたが、やがて車に取って代わられました。その歴史を踏まえて、「敢えてその車を水の上に置き直してみる試みをしたかった」と西野さん。3日間だけの試みを惜しみつつ、鈴木さんからはある提案が。それは「ミラーボールカーをこのまま沈めておくのはどうでしょうか? 何千年後もたった時代の人たちが偶然この車を引き上げて『なんだこの物体は!』となって、また光を当てて踊り出す」という、スケールの大きな発想です。

「隅田川ディスコ」というタイトルには、少し前の時代に流行した文化をもう一度いまに引き寄せてみようという思いが込められており、さらにすみゆめ自体にも江戸時代の風景を現代に引き寄せ、楽しむ狙いが掲げられており、今回の作品とクロスオーバーしていることがトークでは解き明かされました。

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トークも終わりに近づき、時刻は18:00。いよいよミラーボールカーの点灯式が始まります。そのまま会場全体でカウントダウン。「ゼロ!」の掛け声と共に、ミラーボールカーが輝き、くるくると回り始めました。光が当るとなんとびっくり、車の裏面までもが約1万枚の鏡でびっしりと覆われている、文字通りミラーボールの車だったのです。息つく間もなく、DJ TAICHI MASTERによる音楽が会場を包みます。

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続いてこのイベントのマスコット的存在、ミラーボールマンが登場。ミラーボールカーと同じく全身に鏡を纏いながら、抜群のダンステクを見せつけ、会場を盛り上げます。そしてステージの前では、昭和から現代まで、誰もが知っている名曲のリズミカルなMIXテンポに合わせて、小さい子供達からおじいちゃんまでもが体を揺らして踊っています。階段に腰掛けている人も、食べたり飲んだりしながら、そのにぎやかな様子とミラーボールカーの輝きをしばし見つめます。また、通りがかった人が「あれ…車だよね?」と驚きながらも、そのお祭りのような雰囲気を楽しそうに眺めている様子を目撃することができました。

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強いて言えば、ミラーボールカーとステージの距離が技術上少し離れた位置になってしまったのが残念なポイント。また、多様な世代の方々が集まっていたことにより、ディスコの選曲は少し難しそうでした。あえて音楽好きな若者向けだとか、ファミリー向けだとかの戦略的なアプローチをしても面白い展開ができたかもしれません。

吾妻橋からは、スカイツリーと浅草の夜景。そして、ミラーボールカーによって照らされた隅田川テラスが見えました。ミラーボールカーが放った光が、後ろの高架道路の橋脚に反射して、本当にその空間全部がディスコに様変わりしてしまったように感じました。遠くから見たその隅田川の新しい風景は、僕たちに「失われていた何か」を思い出させてくれる風景であったことは間違いありません。

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高橋大斗 1995年山形生まれ。大学で文化政策、芸術の哲学的視点からの分析をメインに研究をし、2018年3月に卒業。多数のアートプロジェクトで運営や記録スタッフとして活動しているほか、ストリーミングなどのメディアにも関わる。またノイズミュージシャン、ライターとしても活動中。

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