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隅田川を眺めながらバーを楽しむ「カミソリ堤防BAR」と「竹町(たけちょう)の渡し復活プロジェクト」【2020年イベントレポート】

2020.09.19 | レポート

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企画名隅田川を眺めるプロジェクト
  • 団体名 : BUGHAUS
  • 開催日 : 2020年09月19日 (土)
  • 会場 : 隅田川テラス(吾妻橋下流東詰)

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隅田川の堤防に特設されたバーカウンターでは、バーテンダーがカクテルを振る舞います。その先にある隅田川を眺めると、水上タクシーが遊覧航行をしていて、予約をすれば乗船可能。お酒と会話を楽しみながら川の景色に親しむひとときが設けられました。

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現在の隅田川両岸の堤防は、整備されて「隅田川テラス」と呼ばれています。スーパー堤防化されたことで、人が水辺に近づける親水性にも配慮されて憩いの場となりました。それ以前の治水対策として作られた鉛直型の防潮堤「カミソリ堤防」が残っているのは数カ所のみ。

そのカミソリ堤防を使って、隅田川に親しみを持ってもらおうと行われたプロジェクトが「隅田川を眺めるプロジェクト」です。「カミソリ堤防BAR」と吾妻橋下流の船着き場のあたりにあった船渡しを、水上タクシーによって再現した「竹町(たけちょう)の渡し復活プロジェクト」の二つを実施。アートプロジェクト「隅田川 森羅万象 墨に夢(すみゆめ)」のプロジェクト企画として、9月19日(土)に開催されました。

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不安定な天候のため、一週間延期になったこのイベント。バー、渡しとも事前予約制でしたが、当日は予約が満員。カップルから、子連れ、年配の方まで、幅広い年齢層の方々が集い、ここ数カ月間ステイホームを強いられていた日常からの気分転換にもなっていた様子でした。

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高さ4メートルはあるカミソリ堤防に沿って足場を組んだ、「カミソリ堤防BAR」。地元のバーテンダーがその上に乗り、カクテルをその場で作って振る舞います。お客さんは4人ずつの交代制で、バーテンダーとの会話を楽しみました。

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そして、「竹町の渡し復活プロジェクト」。水上タクシー「TOKYO WATER TAXI」による遊覧航行。一日だけの船渡しの復活を実際に体験しました。

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一度に乗船できるのは3人ほど。墨田区側の簡易船着場から浅草側に向かって往復します。吾妻橋や東武鉄橋のあたりをぐるりとまわり、遊覧の時間は15分ほど。水上タクシーは船体が小さいので、大きな船が来ると引き波を受けて、船がゆらゆらと揺れました。隅田川の水上は秋風が心地よく、陸上とは違った景色が望めて一見の価値ありでした。

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このイベントの発案者は、東向島の工務店の三代目であり、ポスト工務店BUGHAUSというグループの主宰でもある北條元康さん。北條さん自身は、カミソリ堤防をBARにするための足場を設計し、バーの看板も制作しました。

「この企画は、5年前にこのテラスで何かできないと持ちかけられたときに、以前から堤防にバーカウンターを付けたいという話でBUGHAUSの仲間と盛り上がっていたのを思い出したことがきっかけです。そこからここをいろいろ調べていくと、近くに簡易船着場もあるので渡しができるぞと。2つのアイデアを一緒にすることで、より隅田川を身近に感じる企画になりました。この実現までは許可取りが大変でしたね。テラスは東京都、堤防の外は墨田区と、管轄が違うんですよね。そこを跨いでバーを建てているので、隅田川テラスではたぶん前例のないことですね。今回は1日だけですが、今後は2週末くらい開催できたらもっと盛り上がるんじゃないかな」

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堤防の向かいに立ったバーテンダーは、ふたり。向島「BAR Bee」の山田隆之さんと、錦糸町「Bar Softy」の杉山祐介さん。本日イチオシのカクテル「ムーンドロップ」は杉山さんの奥さんが考案し、「第22回エリートバーテンダーコンペティション」で第2位となった墨田区から生まれた作品です。

山田隆之さんは今回の堤防BARに関してこう語ります。

「3年前に地元の後輩でもある北條さんと話をしていたことがきっかけで、カミソリ堤防BARに協力することになりました。1ヶ月前に許可が降りてやっと実現しました。今回はコロナウィルスもあって、非常に制約が厳しくなりました。でも、その中で皆さんが少しでも楽しんでいただけるようにと思っていろいろ考えました。本来なら一杯ずつメジャーカップで図りながらカクテルを作るんですけれど、衛生面から使い回しが許されないんですよね。なので、今回は準備したカクテルの元をその場で混ぜさせてもらい、バーテンダーの妙味を可能な限り再現できるようにしました。本当はフルスペックでご案内したいんですけれどね」

おふたりとも堤防バーで腕を披露した後に、ご本人たちのお店に出勤したそうです。普段とは違ったシチュエーションを楽しんでいるようでした。

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隅田川に普段とは違う景色を出現させる今回のプロジェクトは、「カミソリ堤防BAR」という集いの場に変容させ、渡しの記憶を再現してみせました。BARの周りの堤防にも、いつしか人がもたれかかり、隅田川をたっぷり眺める時間を生み出しました。

 

髙岡謙太郎(たかおかけんたろう)
オンラインや雑誌で音楽、アート、カルチャー関連の記事を執筆。共編著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』『ピクセル百景』など。