レポート

『Song for 隅田川』お披露目ライブ【2020年イベントレポート】

2020.11.03 | レポート

企画名『Song for 隅田川』お披露目ライブ
  • 団体名 : 野木青依×Vegetable Record×工藤葵
  • 開催日 : 2020年11月03日 (火・祝)
  • 会場 : 隅田公園そよ風ひろば(墨田区向島1-3)

隅田川の左岸にある隅田公園は、水戸徳川家の江戸下屋敷・小梅邸があった場所で、池泉回遊式庭園はその遺構として現在も公園内に残っています。今年春には公園の一部が整備され、広場と芝生ができ、6月には川沿いに遊歩道や、オープンカフェなどが入った施設が開業されました。近くに建つスカイツリーが借景になる日本庭園を取り込む風景が特徴的な公園です。

隅田公園に訪れた人々で賑わう文化の日、野木青依×Vegetable Record×工藤葵によって、「『Song for 隅田川』お披露目ライブ」が開催され、観客回遊型ライブ、楽器体験、音あつめワークショップの3つのイベントが行われました。

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

当初の予定では、10月に音あつめワークショップを行い、参加者とともにフィールドレコーディングをして、その際に採取した音源を素材として『Song for 隅田川』が完成する予定でしたが、天候の関係で延期。野木さんとVegetable Recordのお二人が事前に作成した楽曲に当日即興演奏する部分も加え観客回遊型ライブを行いました。

演奏は、野木さんのマリンバの演奏、Vegetable Recordが事前に隅田川エリアで採取した音源をプログラムしておいたサンプラー、墨田区で3代続く北條工務店が制作した屋台つきのオルガン、キーボード、コンガ、カウベル、グロッケン、エレキギター、シンセサイザーです。ライブの背景として、工藤さんが撮影した写真が公園の遊具をイメージしたインスタレーション作品として展示されていました。

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

 

Song for 隅田川』は、墨田区に旅芸人が訪れていたという歴史から着想し、「隅田川を演奏しながら巡業していく現代版の旅芸人」をコンセプトに2部で構成され、大きな流れだけ決めて即興的に演奏したものです。1部は、親水テラスから眺めた穏やかな隅田川の情景をイメージして制作され、隅田川のせせらぎや降り注ぐ雨の音を想起させます。

すみだリバーウォークから眺めた隅田川の情景を表現したという2部は、リバーサイドウォークの細い通路、歩行者のすぐ隣を走る電車などの、どこかスリリンングな要素をイメージして演奏されました。観客は好きな場所に移動しながら演奏を鑑賞し、それらの間を抜けながら工藤さんがライブの様子を写真に収めていました。

Vegetable Recordの林翔太郎さんは演奏を終えて、「これまでの回遊型ライブのなかでも一番お客さんが多く、演奏の間近まで覗き込んで楽譜を読む女性や、スピーカーに赤ちゃんの耳を近づける人などがいて、歩き回って音を楽しむポイントを探したり、みなさんとても能動的に聞いてくださって良かったです。」と語っていました。

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

 

Song for 隅田川』で奏でられた音は、鳥のさえずり、遊ぶ子供の声、線路を走る電車や、高速道路を行き交う車の音といった、隅田公園独特の環境音と溶け合っていました。また、「写真で演奏と一緒に何かできることはないかと考えてこういった形になりました。」と言う工藤さんは、こうした場所で展示をするのは初めてとのことでしたが、隅田公園に工藤さんの写真が姿が混ざり合っていました。この場所の音や風景が合わさって、ひとつの作品となっていました。

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

楽器体験では、その場に置かれている様々な打楽器や鍵盤楽器などに人々が興味深そうに近寄り、野木さんとVegetable Recordのお二人に説明を受けながら、音を鳴らしていました。「参加者がとても気軽に参加してくださいました。」と語るのは、Vegetable Recordの三上僚太さん。普段はあまり触れることのない珍しい楽器の説明から世間話まで多様な会話が生まれていて、コミュニケーションの場となっていました。

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

 

子供を中心に様々な人々が参加した音あつめワークショップでは、Vegetable Recordのお二人と参加者が、隅田公園から枕橋を渡り、隅田川沿いに出て、すみだリバーウォークの中間まで歩きながら、気になった音をスマートフォンで録音します。隅田川を走る船や電車の音といった環境音以外にも、道端に生えている草木にスマートフォンやタブレットを擦り付けて音を出したり、看板を叩いたり、足踏みをしたり、工夫を凝らして音を採取していました。

収録した音源は、『Song for 隅田川』の素材の一つとして編集され、後日、工藤さんが撮影した参加者のポートレートに曲が聴けるQRコードを付けて、音源付きポートレートとして参加者に送られました。

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参加者が録音した音を加えた『 Song for 隅田川 (Workshop Ver.)』には、船が走る様子や電車の走る音、人々の賑わいといった、隅田川の風景が表現されていました。

撮影:工藤葵

撮影:工藤葵

 

野木さんは「『Song for 隅田川』お披露目ライブ」について、「今回、子供向けのワークショップやイベントがやりたいと思って企画を考えました。子供が音楽や芸術に触れる機会は親の関心に左右され、出会いが限られている印象があるので、ふらっと訪れたところで、普段出会うことがないものに思わず触れてしまう状況や瞬間が作れて良かったです。今後もやっていきたいと思います。」と手応えを語りました。

訪れた人は、思いがけず出会った演奏に耳をひらき、音楽のあるひと時を楽しんでいました。本プログラムは、人々が隅田川やこの地域に親しみや魅力を感じて関心を持ったり、子供たちと音楽を楽しむきっかけとなりました。 

記録映像と音源
Vegetable Record/ Song for 隅田川(外部サイト)


レポーター:小林麻衣子

1982年長野県生まれ、東京都在住。横浜国立大学大学院に在籍し現代美術の研究をしながら、国際展や展覧会の企画・制作を中心に活動している。