レポート

すみゆめの七夕 EAT&ART TARO「江戸野菜のくすり箱」【2020年イベントレポート】

2020.08.09~2020.09.12 | レポート

企画名トーク「江戸の食を探る」、TAROさんのおやつの時間
  • 団体名 : 「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会
  • 開催日 : 2020年08月09日 (日) ~2020年09月12日(土)
  • 会場 : すみだリバーサイドホール(墨田区吾妻橋1-23-20)、オンライン

北斎が七夕の儀式を見立てて描いたと言われる「西瓜図」から着想し、旧暦の七夕の時期に公開収録されたオンラインイベント「すみゆめの七夕」。現代美術家のEAT&ART TAROが注目したのは、当時薬としても重宝されていた江戸野菜の砂糖漬けでした。

墨田区で交流農園を営む牛久光次(NPO法人寺島・玉ノ井まちづくり協議会)、江戸時代の食文化にも詳しい山田順子(時代考証家)を招いてのトークでテーマを掘り下げ、後日実作した砂糖菓子などを申込者に郵送、オンラインで会食するという形式のプログラムをレポートします。

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トークではまず、TAROさんから江戸時代の砂糖事情、お菓子事情に興味を持つきっかけになった、ナスを使った砂糖菓子「初夢」を紹介。調べてみると、ヨーロッパでは古くから果物の砂糖漬けがありますが、野菜を使ったものはナスの発祥地と言われている中東でもあまり見られず、江戸時代の特徴的な食文化だったのではないかということが分かったそうです。

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そして、平賀源内が砂糖を白くする製法を記している。北斎が柚子を刻んで薬のようなものを作った記録も残っている。砂糖自体を薬のように重宝して使っていたであろう、時代背景が共有されます。

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続いて牛久さんからは、江戸時代から続く「寺島ナス」をつくっている「たもんじ交流農園」を紹介。場所は、かつて将軍様への献上野菜をつくる御前栽畑(おせんざいばた)であった旧寺島村(東向島)。現在の墨田区にはいわゆる農地はありませんが、「寺島ナス復活プロジェクト」(2012)をきっかけに、住宅地を転用して地域の人々が交流できる場としての農園を営んでいるそうです。

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山田さんからは、寺島ナスをはじめとする江戸野菜についての解説も行われました。江戸時代、諸国の大名が参勤交代するにあたり、運搬・保管がしやすい米はさておき、野菜は自給自足するようになった。そこで各地から多様な種が持ち込まれ、その品種ではなく、栽培された地名がブランド化していった。これは、仕入れ品を売る八百屋だけでなく、百姓が行脚して直接販売もしていたという背景があるそうです。そして種も売られるようになり、それが江戸から全国へ広がることにもつながりました。

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一方で砂糖は、中国から薬として入ってきて、はじめは漢方などと同じく薬屋で売られていいたそうです。嗜好品としても需要が高まる中、輸入に頼るだけでなく徐々にサトウキビの生産地が増え、値段が下がり普及していく。食に多く使われるようになり、薬屋では売らなくなっていくという流れがあったそうです。

トーク中には、ゆずの薬、スイカ糖、寺島ナス・相模半白胡瓜の砂糖漬けの試作品を味わう時間も設けられました。それぞれの甘みと食感を画面越しに想像します。筆者同様、この時間に思わずお菓子の郵送申し込みをした方も多かったのではないでしょうか。

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そして約1ヶ月後、「江戸野菜のくすり箱」が自宅に届きました。TAROさんと参加者がオンラインでつながりながら実食する「TAROさんのおやつの時間」です。

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参加者は、たもんじ交流農園の皆さんを含めて12組。

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各自、薬のように茶紙に包まれた砂糖漬けや、ビンに詰められたシロップを器に移しての参加です。

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同封された小冊子にも、それぞれ簡単なつくり方を含めた解説などが書かれていましたが、TAROさんがひとつづつ、制作プロセスを含めて解説をしてくれました。寺島ナスや相模半白胡瓜は皮をむいたものを使い、徐々に砂糖の濃度をあげながら漬けていること。スイカ糖は砂糖を使っていないけど1kgが60gになるまで煮詰めることで濃厚な甘さになっていること。ゆずの薬は皮と共に日本酒で煮詰めていて苦さが残り、薬らしい(?)味わいになっていることなど。

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チャットを中心に、参加者の感想や質問が盛り上がり、予定していた1時間があっという間に過ぎました。

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コロナ禍で外食や人に会う機会が減っているこの頃。オンライン配信をただ視聴するということではなく、江戸時代の食が砂糖菓子の「くすり箱」というパッケージで届けられ、味覚や触覚も共有しながら楽しむことができたという企画には驚きと楽しさがあり、貴重な心の栄養を得ることのできた体験でした。

トーク「江戸の食を探る」の映像はこちら

レポーター:橋本誠
1981年東京生まれ。現代社会と芸術文化をつなぐアートプロデューサー。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(現・アーツカウンシル東京)のプログラムオフィサーとしてアートプロジェクト「墨東まち見世」などに関わる。2014年3月より一般社団法人ノマドプロダクション代表理事。2020年6月よりNPOアーツセンターあきた ディレクター。