レポート

画面越しに参加する『どんどこ!巨大紙相撲~北斎すみゆめ場所』

2021.02.07 | レポート

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撮影:川瀬一絵
企画名どんどこ!巨大紙相撲~北斎すみゆめ場所
  • 団体名 : KOSUGE1-16
  • 開催日 : 2021年02月07日 (日)
  • 会場 : <配信会場>すみだ生涯学習センター(ユートリヤ)マスターホール

2019年度のすみゆめでも行われた、美術家ユニットのKOSUGE1-16によるアートプロジェクト「どんどこ!巨大紙相撲」。2020年度は新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれながら、「巡業」と称して墨田区内の東駒形・キラキラ橘・亀沢・東向島の4つの部屋で巨大力士の絵を描くワークショップを実施。そして2月7日、最強力士を決める「北斎すみゆめ場所」の千秋楽がオンラインを駆使して開催されました。子どもたちのユニークなアイデアから誕生した28体の力士が本場所に集い、その取組の様子をYouTubeでライブ配信しました。

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「電子どんどこ!」の参加方法は、①「たたき手」として参戦、②好きな力士に人気投票、③優勝力士を予想、④YouTubeライブ配信で取組の様子を視聴、という4つの選択肢がありました。例えば、①「たたき手」として参戦する仕組みは、自分が応援したい力士を選んで、手元のパソコンやスマホの画面をクリックかタップすると、実際の会場で土俵をたたくハンマーが動いて力士が戦うというものです。私もYouTubeライブ配信を視聴しながら、「たたき手」としてオンライン上で参加しました。

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千秋楽の開催に先立って「たたき手」に向けて行われたガイダンスでは、本プロジェクトの企画者であるKOSUGE1-16土谷亨さんから、ルールや参加方法が説明されました。試合の勝ち負けの基本的なルールは、土俵上の黒い点線に力士の足が重なったら負け、土俵に体がついたら負け、ハンマーに触れたら負けです。試合はトーナメント形式で行い、十両からはじまって、勝ち上がると横綱まで番付があがっていきます。解説は陸奥部屋の浦風親方、実況は元・どすこいFMアナウンサーの下角陽子さんが務め、ゲストコメンテーターに現在は俳優・歌手として活躍する大至さんを迎えて送ります。

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開始時間になると、元・呼出しの誠之さんによる寄せ太鼓の演奏が始まりました。賑やかな太鼓の音とともに壁面に描かれた客席が映し出されると、力士を制作した子どもたちの似顔絵が貼られ、土俵の周りで相撲を鑑賞しているように見えます。続いて行われた土俵入りでは、四股名が書かれた幟旗とともに、力士が1人ずつ紹介されていきます。土谷さんの「本来なら観客に会場で実際に参加してもらう予定でしたが、オンラインでの開催になります。皆さん頑張って試合を勝ち進んでください。」という言葉で、一回戦がスタート。このとき、YouTubeライブのチャット欄では、「焼き鳥買いに行こうかな」「楽しみです」といったコメントが記載されており、オンライン上でも観客が楽しげに鑑賞している様子が伝わってきて、気分が高まりました。

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そしていよいよ取組です。土俵に上がった力士同士が組んだら、行司の「はっけよいのこった!」という掛け声にあわせて、さまざまな場所にいる「たたき手」たちがクリックやタップを始めます。土俵のまわりにぐるりと巡らされたハンマーが、クリック・タップに反応して振り下ろされていきます。大人の背丈と同じくらいの大きさのダンボール製の力士たちは、ハンマーが土俵を叩く振動によって、力強い技を繰り出します。ハンマーが土俵を叩くリズミカルでダイナミックな音が響き、画面越しからも取組の迫力が伝わってきます。チャット欄には、「いけっ!」、「ガンバレ!」、「うっしゃ!寄り倒し!!」といった、鑑賞者のリアルタイムのコメントが賑やかに並び、まるで観客が同じ場で応援しているかのような一体感も感じられます。

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回を重ねて勝ち進んだ「小石脇」と「ドラの富士」の取組では、両者が同時にたおれたように見え、初めての物言いがついて緊張が走ります。取り直しの結果、右からの上手投げで「ドラの富士」が勝ちました。まるで本当に会場で鑑賞しているかのような緊張感と躍動感が画面越しに伝わってきます。

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そして、いよいよ私が選んだ力士「ひきふねこ」と「おもちくん」の取組です。彩り豊かな縞模様の腕を持つ「ひきふねこ」の得意技はひっかき、対する「おもちくん」はお正月の鏡餅のような体格で頭にはみかんが乗っています。おもちくんの得意技はベタベタ、新潟県出身、体を白いガムテープで強くした自信作です。「はっけよいのこった!」の声にあわせてパソコンを夢中でタップします。「おもちくん」の見事な技によって「ひきふねこ」は残念ながら負けてしまいました。浦風親方からは「おもちくん、いい稽古していますよ。」とお褒めの声がかけられます。オンライン上ながら「たたき手」として熱中して参加したので、実際には戦っていないにも関わらず、取組をしたかのようなさわやかな気分を味わいました。

注目の決勝戦。「東~、カメハメハ山~、西~、小石脇~」と誠之さんの呼出しの声が響きます。行司の「はっけよい、のこった!」で取組がはじまると、ジリジリと両者が詰め寄って行きます。わずかに「カメカメハ山」が傾き、「小石脇」の勝ち。土俵に座布団が投げ込まれます!

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最後に浦風親方は、「昨年のように子どもたちがこの場にいないことは残念ですが、また子どもたちが元気に土俵を叩ける機会があるといいなと思います。参加してくれた皆様に本当に感謝します。」と話しました。大至さんは「大相撲に勝るとも劣らない素晴らしい熱戦が繰り広げられて、自分自身、白熱しました。作っているみなさんの歓声が聞こえてくるようでした。」と感想を述べました。

今回の千秋楽はオンラインでの開催でしたが、実際の会場には土俵などが手作りで設けられており、画面越しでも力士や出演者に親しみを感じながらライブ配信を楽しむことができました。これまでに「どんどこ!巨大紙相撲」を開催してきた長野や高知からも力士が友情出演するなど、本プロジェクトに関わるすべての人がさまざまなつながりを感じられる工夫が随所になされていました。また、実況や解説をはじめ、行司や呼出しに相撲関係者を迎えることで相撲文化にも触れることができ、両国国技館を有し相撲部屋が多い墨田区の特徴と魅力が存分に伝わるプロジェクトになりました。

レポーター:小林麻衣子
1982年長野県生まれ、東京都在住。横浜国立大学大学院に在籍し現代美術の研究をしながら、国際展や展覧会の企画・制作を中心に活動している。