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公共空間で行う表現活動が拓く未来【2020年度クロストーク】

企画名表現活動が生まれる公共空間をつくる【2020年度クロストーク】
団体名:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会
開催日:2021年02月01日(月)
会 場:オンライン

「隅田川 森羅万象 墨に夢」(通称:すみゆめ)では、隅田川や親水テラス、公園など、公共空間を使った企画が行われてきました。誰でも出会える場でアートプロジェクトを行うこと、そして公共空間を活用することの意味を掘り下げるクロストーク。集まったのは、まちを舞台に音楽イベントなどを手掛けるNPO法人トッピングイーストの清宮陵一さん、墨田区企画経営室公共施設マネジメント担当として隅田公園の活用を考えてきた福田一太さん、そして、水辺の活用事例に詳しいミズベリングの岩本唯史さんです。

<プロフィール>
岩本唯史
ミズベリングプロジェクトディレクター/(株)水辺総研代表取締役/水辺荘共同発起人/建築設計事務所RaasDESIGN主宰
建築家。一級建築士。国交省のミズベリングプロジェクトのディレクターを務めるほか、全国の水辺の魅力を創出する活動を行い、和歌山市、墨田区、鉄道事業者の開発案件の水辺、エリアマネジメント組織などの水辺利活用のコンサルテーションなどを行う。横浜の水辺を使いこなすための会員組織、「水辺荘」の共同設立者。東京建築士会これからの建築士賞受賞(2017)、まちなか広場賞奨励賞(2017)グッドデザイン賞金賞(ミズベリング、2018)

清宮陵一
NPO法人トッピングイースト 理事長/合同会社ヴァイナルソユーズ 代表
1974年東東京生まれ。2001年に音楽レーベルvinylsoyuzを始め、音楽家による即興対決プロジェクト『BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS』を主宰し、2006年のドキュメンタリー映像作品製作以降、国立科学博物館、後楽園ホール、スタインウェイ工場(NewYork)にて公演を実施。今後も日本人音楽家が海外に挑むプロジェクトとして五大陸制覇を計画中。
坂本龍一氏のレーベルcommmonsに参画後、音楽プロダクション合同会社ヴァイナルソユーズを立ち上げ、現在はさまざまな音楽家らと協業する傍ら、特別なヴェニューや公共空間でのパフォーマンスを多数プロデュース。2014年には音楽がまちなかで出来ることを拡張すべくNPO法人トッピングイーストを設立し、地元・東東京に根差したプログラムを展開。2021年、TokyoTokyo FESTIVALスペシャル13『隅田川怒涛』を実施。

福田一太
大学、大学院にて土木工学を専攻。学生時代はバレーボールに明け暮れる。特にやりたいこともなく、単に発注者になりたいという想いで、関東私鉄に入社。保線、土木構造物の維持管理、自治体協議窓口等の業務を経て、2016年から2年間、東京都へ派遣となり、大規模駅(品川・新宿・渋谷・東京)周辺再開発事業に携わる中で、「まちづくり」に目覚める。その後、2018年、人生二度目の公務員(墨田区派遣)に。現在は、北十間川周辺の公共空間からはじまる「まちづくり」の業務に携わる。 普段とは違う使い方を積み重ねていく

普段とは違う使い方を積み重ねていく


清宮
:すみゆめの立ち上げのとき、北斎の「踊行列図」にちなんで、隅田川テラスで「すみゆめ踊行列」というプログラムをやろうって提案したんです。墨田区はプレイヤーが多くて、アクションする人はいるんだけど横のつながりがない。それで個別のプログラムとは別に、みんなで相乗りするような、実践しながらネットワークができるようなことをやってみたいと思って。でも当日は雨が降っちゃって、区役所の中で踊ったり演奏したり、いろいろやったんですけど、いきなり共存するというか、一緒にやるのは結構難しいものでした。 翌年は同じ場所で一斉にやるんじゃなくて、あちこちから一カ所に集まってくる感じに変えたんですね。リサーチやトークとか、あちこちでやっていたものが最終的に隅田川テラスに集まるというようにした。これはうまくいって、次の年は、地面じゃなくて川の上でやってみようと。いろいろなタイプの船を使って、歌ったり、パフォーマンスやトークを併行しながら、最後は隅田川テラスに集まってみんなで演目を楽しむようなことをやりました。

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「すみゆめ踊行列2016」2016年9月22日

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「すみゆめ踊行列2018 隅田川埠頭:影絵パフォーマンス」2018年9月2日

岩本:隅田川では以前から、「すみだ川アートプロジェクト」や「東京ホタル」などの川や公共空間が舞台になったイベントが行われてきましたが、その蓄積があるからこそ、すみゆめができる状況にあるんでしょうね。それがすみだの風景の一つになっていて、地域の強みになっていることは間違いない。 もっと歴史を遡ってみると、江戸の頃に墨堤がうまれて桜並木になったあたりから、川遊びの大衆化が広がった歴史の先端だったわけですけど、水辺利用を市民が構想して実現できる場所って実はあまり多くないなかですみだは現代でも川の文化の先端を走っている。構想を実現できるのがすみだの力なんだろうと思います。

清宮:とはいえ正直、場を使う許可を得るまでは結構大変です。なんでもやっていいよというわけではなくて、何かやりたいと考える人がまず出会うのは管理をする側で「基本的には駄目なんです」という対応から始まる。あれもこれも駄目といわれると気持ちが削がれるというか、どうにも前に進めず諦めてしまう人もいますよね。そういうのって、すごくもったいないと思うんです。 川の上となると、さらに難易度が高くなって、船を扱う事業者さんそれぞれが目指しているところも違うから、イベントでの連携とかなかなか難しい。でも我々が事例をつくって拓いていくことで、なんとか後続に引き渡したいと考えています。

岩本:管理者と利用者がお互いに、慣れが必要なんでしょうね。これまで管理に徹していたり、仕事場として独占的に使われてきたところで、文化芸術の活動をする。それで新しい光景が生まれて、お客さんも来てくれるようになるわけだから、価値が認知されていくでしょうし、少しずつ印象も変わってくると思うんです。 この5年間、すみゆめでは公共空間を使ったプロジェクトが多く開催されていて、それで得られた成果や変化もあるだろうと思いますが、まずなにより継続されていることがすごい。表現したいという意志ある人が集まる仕組みをつくり、貪欲に取り組んできたことに敬意を表します。

使い方を試していく


福田
:私は、公共空間をどう活用していくかを考えることが仕事です。公共空間を使うとき、なにを大事にするべきか話し合ってきました。試しながらではありますが、大きいイベントをたくさんやるというより、地域の人たちの日常をしっかりつくっていくような仕掛けを継続してやっていきたいと考えています。

清宮:公共空間を管理する行政側がそういう姿勢でいてくれるのは、心強い。

福田:使いたい人がいても、安全面や規則に照らして、どうしても守りに入りがちなのが行政です。僕たちは行政の中から「一緒にやっていこう」という流れをいかに生み出すか、どちらかというと内側に対して営業活動を行っているようなところがあります。まずは自分たちが変わることから始めようということで、隅田公園を会議室として使ったり、1週間テントを張ってそこに居続けるようなこともしてみました。

岩本:それ、おもしろいですね。

福田:変な人がいるぞって覗きにくる人がいたり、どうしたら使えるのかを尋ねられたり。すみゆめの皆さんにお会いしたのもそのときでしたね。僕らも実際に申請して使ってみて、手続きが思っていたよりも簡単だったとか、いろいろな発見がありました。行政側が単に使わせたくないというわけではなくて、使いたい人が申請するタイミングが遅かったり、お互い不幸なすれ違いが起きていることもすごく多いんです。公共空間なので独占して使うのは簡単ではありませんが、使うことはできるんですよ。 これまで、野菜の市場を開いたりキッチンカーを入れてみたり、遊具メーカーが新しい遊具のテストをしたこともあります。DJイベントをやりたいという話があったときは、音量をどれくらいまで出しても問題ないか、確かめながら実験的に行いました。これからも、活用する人たちのサポートを全力でやっていこうと考えています。

清宮:隅田公園で開催した「屋台キャラバン」が面白かったと聞きました。

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sheepstudio「屋台キャラバン」2020年10月3日、4日

福田:小さくてちょっと変わった屋台がいくつも公園内に散らばっていました。関わりたい人は関わればいいし、遠目に見ていてもいい。他者が入り込める余白がたくさんあるし、入り込んでもやることを規定されない自由さがある。一つの空間のなかでそれぞれの過ごし方ができるのは、すごくよかったですね。「自分でも屋台をつくってみたい」という声もあったんですよ。自己表現している人を見て、自分でもなにかやりたくなったり、新しい自分に気づいたり。そういう機会があるのは、子どもたちにとってもすごくいいと思うんですよね。小さいことを日常的にやっていくのがいいなと思いました。

公共空間に表現がある


岩本
:アートが日常にあることで、新しい価値観が必要だって認識されたり、多様性が守られたり、表現をする人がいることが拠り所であるという認識がひろがっていることと、公共空間が使われるようになってきたことは、パラレルな関係だと思うんです。世の中が困ってなかったら、公共空間を使いましょうっていう話にはならないんですよね。 分断されがちな今の世の中で、立場や考えが異なる人が出会える、つながりをつくるのが身の回りにある公共空間なのかもしれません。そこでどんなことが行われるかが、これからの生活の質や文化度を高めることに貢献していくのは間違いないです。

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一般社団法人もんてん「両国橋アートセンター2019:ストリートピアノすみだ川」2019年10月5日、6日

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すみだパークシネマフェスティバル2020実行委員会「すみだパークシネマフェスティバル」2020年9月26日、27日

清宮:以前から、神社や学校など誰でもアクセスできる場所で、子どもたちがインドネシアのガムランを演奏体験する機会を作っているんですね。ガムランって、それぞれの村ごとに調律が違って、楽譜はなくて、目の前の人を真似ながら演奏するというものなんです。ハマる子はものすごくハマるんですよ。あるとき児童館でやっていたら、ふと小学校低学年の女の子が遊びに来たんです。始めて触ったそうなんですが、めちゃくちゃうまくて楽しそうなんですよ。

福田:そんなことがあるんですね。

清宮:誰でも出入りできる場所で我々が音楽を鳴らしているという状況を子どもたちが受け取って、ふらっとアクセスできる。それが、その子にとって次のなにかをつくるようなことが起きたらいいなと思うんです。それって教室や塾とかだと実現しないんですよ。公共空間だからこそできることって絶対にあって。届けるべき人に届けられる場所なんだという可能性を感じています。

福田:公共空間で何かやっていると、それに自ずと触れられるよさがあるし、基本、誰も拒まない場所だから、誰でもアクセスできて経験できる。もちろん、それをデザインしていかなくてはならないですけど、場所と経験が結びついたときに大切な思い出になりますよね。
墨田区って家族で住んでいても、子どもが大きくなると外に出て戻ってこないことが多いんです。あまり住み続けるまちになっていない。すみだのあの場所で経験したという記憶が強く残ると、また戻ってくるきっかけになるかもしれない、いい循環がうまれるかもしれませんね。

岩本:いろいろな人が生き生きできる場所がすみだにあるということは、先々に大きく影響するでしょうね。表現できる場があるというのは、本当に大切なことだと思います。同時に、公共空間は、地元の人たちそれぞれの場所でもあるわけです。だから、その人たちの意志が集合して、もっとアートや表現の場として使うことを求めるような声が出てくるといいと思うんですね。例えば、横浜の黄金町の人たちはアートが必要だって自分たちの口で言える。自分たちで未来を見て、意思決定していける人たちがいる地域は強いですよ。 そういった土壌を培っていくことも、すみゆめが担っているのかもしれない。

清宮:すみゆめには、アーティストの表現もあれば地域の人の遊びのような活動もあって、プログラムが幅広い。その懐の深さが特徴だと思います。すみだにはびっくりするくらいいろんな動きをしている人たちがいて、ちょっと違うことをやっている人たちをつなげたり、個々の強みをさらに活かせる場づくりみたいなことも公共空間でもっとできるんじゃないかなと。アート活動の少し外側にいる人が「アート必要じゃない?表現大事だよね!」と思える、そんな人が増えていくことも重要かなと感じます。

岩本:すみだが今向き合っている社会的課題に取り組むとか、新たに活動していく人たちを応援することにもつながるんじゃないかと思いますね。これからも、いろいろな表現活動が生み出されていく場であることを期待しています。

進行:橋本誠
編集・構成:中嶋希実

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