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「冨嶽三十六景」から着想を得た、音で織りなすインスタレーション

企画名Songs for すみだ名所 〜東京スカイツリーを音楽で表現する〜
団体名:ベジタブルレコード
開催日:2021年10月18日(月)~10月31日(日)
会 場:東京スカイツリー®天望デッキ、すみだ北斎美術館、小梅橋船着場

Vegetable Record(以下、ベジタブルレコード)は、ショップやホテルなどのための音楽をプロデュースしてきた音楽レーベルですが、ホテルといっても客室のみならずトイレの個室のためだけに音楽をプロデュースしたり、またある時は、温浴施設のための楽曲だったり、さらに食べ物まで対象を広げて「音楽付きハーブティー」や「音楽付きおでん」まで手がけてしまうなど、とにかくユニーク。彼らの追求する音楽作りは本当にいつも周りをあっと言わせてくれます。

「音楽の新しい楽しみ方・価値観を創る」をレーベルのコンセプトに掲げていますが、そんなベジタブルレコードが今回すみゆめ企画で挑戦したのはどんな音楽作りだったのでしょうか。
2020年のすみゆめ企画では、隅田公園で「お客さんと演奏者がステージで隔たれているのではなく、鑑賞者の中に演奏者が入っていく」回遊式ライブ「Song for 隅田川」で楽しませてくれましたが、今回ベジタブルレコードが仕掛けてくれたサプライズとは?をリポートします。    

メンバーの林さんは、こう話しています。――今回は、葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」から着想を得ています。あの作品のポイントというか醍醐味って、富士山を様々な場所から描いて、場所によって富士山の構図や大きさ、距離感が違ったりすることで「富士山の捉え方の面白さ」「構図の面白さ」を表現しているところかなと思ったんですね。ちょうどここからもスカイツリーが見えますけど、僕らの作品も、まさに「この見える風景を音楽で表現する」みたいなニュアンスです。」(【特別対談 #5 みくまり屋台のピクニック】Vegetable Record × ヨネザワエリカ 2021.09.12 より)――

     会場はスカイツリーが見える3箇所で、それぞれに大きく1枚にプリントされた譜面とQRコードが設置されていました。訪れた人が、スマホでQRコードを読みこむと楽曲が流れだす仕組みです。

ベジタブルレコードが考えた東京スカイツリーの風景をインスピレーション源とし、1枚の絵画のように作曲した15分間の音楽「Songs for すみだ名所」をQRコードで読み取ると、3箇所それぞれ違ったヴァリエーションの音楽が流れます。楽譜の中にモチーフとなったスカイツリーのメロディーもあり、目と耳にスカイツリーのある風景を届けています。

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まず、東京スカイツリーの天望デッキの展示です。  

高さ350メートルの上空に位置する天望デッキへは高速エレベーターを使って一気にのぼります。天望デッキからは360°パノラマが。示スペースは、天望デッキの一角に設けられていて、その目印は、QRコードと一緒にプリントされた譜面の白幕。スマホでこのQRコードを読みこむことで、楽曲「Songs forすみだ名所」が流れ出します。

音楽が流れると、その途端に目の前に広がるミニチュアのような東京の街並みの眺望が、かすかに動き出すかのような、とても不思議な感覚にとらわれます。

天望デッキを降りると、次に2つ目の展示ポイント、小梅橋船着場に向かいました。東京スカイツリーから歩いて約4分の北十間川沿いに整備された新しい船着場は、スタイリッシュなカフェと隣接しています。

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ここでも設置されたQRコードを読みとると、同楽曲のヴァリエーションが流れ出します。すると、船着場の景色と曲が化学反応し、ワクワクするような体験をしました。

3つ目の展示ポイントはすみだ北斎美術館。江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎にちなんで2016年に開館した施設で、銀色に輝く壁面の建物は、遠くからも目を引きます。設置場所はそんな美術館建物の入り口前です。

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ここで林さんの言葉を思い起こしました。――僕らの作品も、まさに「この見える風景を音楽で表現する」みたいなニュアンスです。――

北斎の時代を象徴するのが富士山なら、スカイツリーは、現代の東京のランドマーク。それぞれの展示場所から見えるスカイツリーの姿を、それぞれの楽曲と共に味わう、それがこの3箇所に仕掛けられたサウンドインスタレーションのサプライズです。訪れる人が気軽に巡れるのもいいところ。ストリートアートのような感覚です。

それぞれの展示ポイントには訪れた人が自由に持ち帰れるポストカードが置かれていました。このポストカードには展示されていたのと同じ譜面とQRコードがデザインされていて、切手を貼って郵便に出せるようになっています。思い出に自分に宛てて出せば帰った時にポストを開けるのが楽しみですし、まだこの曲の存在を知らない知人や家族に送って伝えるのも夢が広がります。

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アーカイブ動画・写真を公開中:https://www.vegetablerecord.com/songs-for-famous-sights-of-sumida

 

堀 あいえ
東京都生まれ、東京都在住。上智大学文学部フランス文学科卒業後、一橋大学大学院言語社会研究科修士課程を2003年に修了。雑誌・書籍・webでは翻訳・インタビュアーとして執筆。著書に「スタイリッシュ・シネマとスケッチ・ノート 映画の中のファッションと衣裳デザイン」(文化出版局)、翻訳書に絵本「星の王子さま」(徳間書店)など。2020年にノマドプロダクションに参加。

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