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その場そのときの偶然を大切に「マリンバさんのお引越し」レポート【2021年イベントレポート】

企画名マリンバさんのお引越し
団体名:野木青依
開催日:2021年11月05日(金)~12月19日(日)
会 場:WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO、喫茶ランドリー、京島駅(元米屋)ほか

2021年度「隅田川  森羅万象 墨に夢」(以下「すみゆめ」)のプロジェクト企画のひとつとして実施された「マリンバさんのお引越し」。そもそもこの企画がどのように始まったのか、そこで起きたことや実施して得たことなどを、本企画制作担当の宮﨑有里がレポートします。

葛飾北斎のエピソードから着想を得た「マリンバさんのお引越し」

「マリンバさんのお引越し」とは、マリンバさん(マリンバ奏者の野木青依とマリンバ)が墨田区内を巡る音楽プロジェクトです。墨田区に生まれた葛飾北斎が、90年に及ぶ長い生涯のうち90回以上も引越しをしたというエピソードや、歴史的な画家でありながら「北斎さん」と呼ばれ親しまれていることから、野木さんは企画の着想を得たそうです。

4620693218568499855-6e6001dcc8ee49508027b4cdbff7a33d-21112602(撮影:アベトモユキ)

お引越し先として、東京スカイツリーの近くに2021年にオープンした「WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO」、両国駅から徒歩10分のところあるコインランドリーが併設されたカフェ「喫茶ランドリー」、古い建物が多く並ぶ東向島にある元米屋をリノベーションしたスペース「京島駅(元米屋)」の3拠点を事前に決定。さらにマリンバさんを呼びたい新たなお引越し先を募集し、小梅保育園、京島に住むご家族のご自宅、という計5箇所の全く異なる場所にお邪魔しました。

さまざまな人が力を発揮するための機会とサポートを提供する「すみゆめ」

「マリンバさんのお引越し」は「すみゆめ」によるサポートを受けながら実現しました。野木さんは2020年度に「すみゆめ」に参加し、墨田区のまちや人の良さに触れ、今後も墨田区でプロジェクトを実施したいと思うようになりました。2021年の春「マリンバさんのお引越し」企画が「すみゆめ」に採択され、野木さんと宮﨑の制作チームが始動。まずは実施会場を探すため、墨田区内のいくつかの施設を訪問。児童館や店舗、公園などを巡りつつ、すみゆめ事務局とも相談しながら会場を決定しました。

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↑「喫茶ランドリー」の下見にはすみゆめ事務局の岡田さんも同席。

そのほか「すみゆめ」ではチラシを区内の文化施設や小中学校に配布する広報協力などがあります。実際、お客さんの中には区役所や学校でチラシをもらった方が多く訪れ、配布の効果を感じました。
また月に一度、「すみゆめ」に参加する団体のメンバーが集まる「寄合」がおこなわれ、事業を進める上での悩みや工夫、プログラムの進捗をその場で共有。参加団体同士の横のつながりをつくる機会になっています。

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↑2021年12月、両国にある「門天ホール」でおこなわれた「寄合」の様子。それぞれのプログラムの記録映像を見ながら工夫した点などを共有しました。

↑すみゆめ参加団体やアーティストなどが企画のあれこれや地域の面白いことを移動スタジオからライブ配信する、すみゆめ主催企画「みくまり屋台のピクニック」にも出演しました。

その場そのときの偶然を大切に

では実際、「マリンバさんのお引越し」ではどのようなことが起きていたのでしょうか。
これまで、公園などの公共空間で演奏をしたり、コンサートホールでごろごろしながら自由に演奏を聴いてもらうコンサートなど、じっと座って鑑賞するだけではない方法や音楽のあり方を模索して実践してきた野木さん。

%e3%81%82%e3%81%8b%e3%81%8b%e3%82%99%e3%81%ad3↑あかがねミュージアムで開催された「野木青依マリンバコンサート ~マリンバ・ネリネリ in にいはま~」の様子

今回もそれぞれのお引越し先で野木さんは、決まった曲目にそって演奏するのではなく、その場の雰囲気や気分に合わせて即興演奏をしたり、お客さんとおしゃべりをしたり、お客さんにもマリンバを演奏してもらうなど、人や場との交流の時間を大切に過ごしていました。特に私にとって印象的だったのは、マリンバを演奏し続けている子どもがいたとき、野木さんが演奏を近くで見守りながら、ほかのお客さんと一緒にその子の演奏を聴き始めた場面でした。お引越し期間中、野木さんとお客さんの立場が「演奏家/お客さん」と分けられているだけではなく、変化したり曖昧になる瞬間を何度も見ました。

4620693218568995555-efc1ae4269a744be9b465ef5e089dc9e-21112602↑子どもの演奏を野木さんが聴く側になる場面も。(撮影:アベトモユキ)

またお客さんからの質問に野木さんが答えたり、「子どもにピアノを習わせているのだけど…」とお子さんを習い事に通わせているお母さんのお悩みを聞いたりもしていました。私は近くで、演奏と体験の時間のバランスや、お客さんの楽器の扱い方を眺めつつケアをし、野木さんと気づきを共有しながら、場を良い状態にできるやり方を日々調整していました。

次はどこを訪ねよう

お客さんからは、「天気や風、行き交う人によって演奏が変化していくのを感じて素晴らしかった」「野木さんが全身を使って演奏している姿が印象的でした」「マリンバの弾き方をやさしく教えてくれた」など、さまざまな感想をいただきました。

★感想やそれぞれのお引越し先でのレポートはこちらのnoteからお読みいただけます。https://note.com/aoinogi/m/md555b2593b79

4620693218568995540-dd4eab6de6434a81baaaff03b917e86d-21112602↑「喫茶ランドリー」での様子。子どもと一緒に演奏。(撮影:アベトモユキ)

企画を振り返って野木さんは「『マリンバさんのお引越し』では、毎回、あのとき誰となにをしゃべったかを思い出します。自分が演奏を聞いてもらったことより、マリンバの周りに集まった人たちがその場限りの会話をするというのが、自分が見たかった景色でもありました。また、不特定多数の人に出会うためにまちに出てみたことで、そもそも外にいない人の存在にも気づき、自分がもっとうちに入り込んでいかなければいけない場合もあることがわかりました」といいます。今後もまたマリンバさんに会える機会を楽しみにしていてください。

4620693218568995555-9eeed759e18949a8857136a343259ad0-21112602-1(撮影:アベトモユキ)

野木青依インタビュー記事(note)
「自分を一番自分が大事にする」「マリンバさんのお引越し」主催・マリンバ奏者・野木青依インタビュー

■開催概要
「マリンバさんのお引越し」
🕑2021年11月5日(金)〜7日(日) 11:00-16:00
会場名:WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO(東京都墨田区向島1-23-3 東京ミズマチイーストゾーン(E01))

🕑2021年11月11日(木)〜13日(土) 12:00-18:00
会場名:喫茶ランドリー(東京都墨田区千歳2-6-9 イマケンビル1階)

🕑2021年11月19日(金)〜21日(日) 12:00〜16:00
会場名:京島駅(元米屋)(墨田区京島3-50-12 )

🕑2021年12月3日(木)10:00〜11:00
会場名:小梅保育園

🕑2021年12月19日(日)10:30〜11:30
会場名:京島に住むご家族のお家

主催 : 野木青依
制作マネジメント : 宮﨑有里
宣伝美術 : 竹内巧
記録撮影:アベトモユキ
衣装協力:HOUGA

野木青依WEBサイト

 

宮﨑有里(みやざき・ゆり)

ニックネームはゆりえる。1995年千葉県生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業。2019年〜2021年「Tokyo Tokyo FESITVAL スペシャル13『隅田川怒涛』」の事務局を務め、現在はフリーランスで音楽やアートプロジェクトの制作/運営/広報に携わる。好きなものは芋、プラナリア。最近興味のあることは畜産農業と演じること。https://musicsky.amebaownd.com/

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