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誰もが北斎マインドをもって創作を楽しむ「みんな北斎プロジェクト 影絵であそぼう!2022」【2022年イベントレポート】

企画名みんな北斎プロジェクト ワークショップ編「影絵であそぼう!2022」
団体名:みんな北斎プロジェクト
開催日:ワークショップ:
2022年9月29日(木)
2022年10月22日(土)①10:00~11:30 ②13:00~14:30 ③15:00~16:30
影絵パフォーマンス:
2022年10月29日(土)17:00~19:00
会 場:ワークショップ:カラコネオフィス、きらきら会館
影絵パフォーマンス:隅田公園そよ風ひろば

2022年秋、みんな北斎プロジェクトでは、ワークショップを担うメンバーの長と近田が中心となって、「影絵であそぼう!」を墨田区内各所で実施しました。その様子と、開催に至った経緯をプロジェクトメンバーの三田がレポートします。

すみだのまちに飛び出したワークショップとパフォーマンス

工作と影絵あそびのワークショップと、屋外で影絵パフォーマンス体験ができるこの企画では、親しまれてきた影絵遊びを通して、子どもも大人も、障害のある人もない人も一緒に楽しんでもらえることを目指しました。影絵師SAKURAさんを監修・ナビゲーターに迎え、会場を前年のユートリヤから、今回はより、すみだのまちに飛び出して商店街や公園などに移し、2回のワークショップと、そのお披露目となるパフォーマンス体験を行うことができました。

墨田区石原の福祉作業所「カラコネオフィス」で実施したワークショップでは、通所する方とスタッフさん計8名の方が影絵を投影するための白布のスクリーン作りに挑戦。ロウケツ染の手法を用いて、花火をモチーフに思い思いの絵柄を描いていただきました。

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一方、キラキラ橘商店街にある「きらきら会館」(京島第二集会所)のワークショップでは、事前募集により集まった65名の子どもたちが影絵あそびで身につけるお面づくりに挑戦。工作用紙とカラー袋を使って、ユニークなモンスターのお面や衣装をつくりました。

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そして、隅田公園のそよ風ひろばでは、ワークショップから生まれたスクリーンやお面、落ち葉や古着を用いてその場で作った衣装や装飾を身につけて、プロジェクターの光やLEDライトなどの前でモンスターに変身する影絵の世界を体験。その他にも、公園を舞台にした光と影の仕掛けにより、参加者自らが遊びながら表現する影絵パフォーマーとなっていました。

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みんな北斎プロジェクトのはじまりとミッションの変化

みんな北斎プロジェクトはすみだ北斎美術館の開館記念プロジェクトとして2016年にスタートした墨田区の事業でした。その第1弾として北斎が生きたすみだから新しい障害者アートの波を起こそうと、東京ソラマチで開催された「全国障害者アート公募展」では、全国の障害のある方々から1,500点を超えるアート作品の応募があり、そこから選ばれた100作品ほどが展示されました。私たちすみだクリエイターズクラブ(※)のメンバーはNPO法人エイブル・アート・ジャパンの事業運営のもと展覧会の制作を担当させていただいたのですが、その時に感じたのは、意外や地元墨田区の障害のある方からの作品エントリーが少ないことでした。

※2013年に発足した墨田区在住在勤のクリエイターのグループ
https://sumida-cc.com/

その後、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、漫画家しりあがり寿さんを監修に迎え、ワークショップで生まれた作品を素材に障害のある人もない人も参加できるアニメーション制作の取り組み「アニメですみだ!」を3年にわたって行った後、区の事業としてのみんな北斎プロジェクトは終了することとなりました。

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ところで私は、墨田区内の福祉作業所等で行われるオリジナル商品の製造・販売を支援するすみのわという区の事業にも携わっています。その活動の中で、描いてもらった絵を商品デザインに取り入れようと、福祉施設に絵画提供の呼びかけをするのですが、好んで絵を描ける方がこれまた意外と少ないと感じています。どうやら、学生時代はまだ美術の授業などで表現する機会はあるものの、卒業して大人になると創作活動に触れる機会がほとんどなくなり、創作すること自体を忘れてしまうためのようなのですが、こういうことは障害のあるなしに関わらず誰にでも言えることなのかもしれません。

これら活動の中で実感していた、地域の障害のある方の創作活動の機会が少ない状況が未だある中で、みんな北斎プロジェクトをこのまま終わらせてしまってよいのだろうか… そんな思いから、すみだクリエイターズクラブは新たに一般社団法人墨田区観光協会と協力体制を組み、みんな北斎プロジェクトを2021年に再スタートさせることとなりました。 

“ アートの前では、みんな自由、みんな同じ。”

そんなコンセプトものと、3つのミッションを掲げ活動を行っています。

1)創作活動を通した交流の場の創出
障害の有無にかかわらず、誰もが北斎のようにパワフルで自由なマインドを発揮し表現を通して交流できる場を設ける。 

2)創作動を活かした障害者の環境づくり
障害のある人にとっての文化芸術活動を身近なものにし、そこから生まれたものや関係が地域や経済に活きる循環をつくり出す。 

3)墨田区の地域資源としての北斎の認知度を高める
葛飾北斎を地域資源と捉え企画に活かすとともに「北斎が生きたまち」=「すみだ」という認識を区内、区外に広める。 

このミッションを実現するためには、創作活動に触れる機会としてのワークショップがとても大切と考えます。そこで、取り組む活動には、創作することの喜びを引き出し、創作の可能性を広げられるようなワークショップをできるだけ組み込むようにしてつとめています。

例えば、JR錦糸町駅北口・南口とJR両国駅西口の喫煙所の壁面を障害者アートが埋めた「浮世絵巻」シリーズでは、区内の障害者福祉施設の利用者さんを対象に、しりあがり寿さんとともに自由に絵を描くワークショップを実施。持ち寄りの絵も含めコラージュアートに仕上げました。ここでは「障害のある人もない人も。たばこを吸う人も吸わない人も。違いを超えてみんながつながることをめざした透明な壁」(しりあがりさんコメント)をつくりました。

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創作することの喜びとともに生涯にわたって森羅万象を描き続けた、すみだの大先輩 葛飾北斎。障害のある人もない人も、誰もがそんな北斎マインドをもって創作することを楽しむことのできる機会を、みんな北斎プロジェクトはこれからもこのまちから作って行ければと思っています。

三田大介(みただいすけ)
地元墨田区をベースに、福祉や商業等の分野を中心とした地域活性化のコーディネーターをしている。同区のクリエイターのグループ「すみだクリエイターズクラブ」に参加し、そのメンバーとともに2014年から区内の福祉事業所の商品づくりを支援するプロジェクト「すみのわ」、2016年から「みんな北斎プロジェクト」に携わっている。2017年より同区の個人商店の課題解決のサポートをする「墨田区商業コーディネーター」にも従事。

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