日々の暮らしの中にある唄、民の唄を紹介するバラエティーショー「すみだタミノータ 〜音楽時間旅行〜」
【すみだタミノータ 〜音楽時間旅行〜】は、すみだとタミノータ(民の唄)をテーマにした、音楽プログラムでお届けするバラエティーショー。
中世から現代にかけて、4名の演者による演目を通して体感することで、時の経過とともに揉まれ、形作られてきた大衆の集合知ともいえる民の唄の旋律のうつりかわりの歴史をたどりました。
2022年度、北野留美が参加し発表したプロジェクト企画「盆踊りストーブリーグ」(去年のイベントの様子はこちら)では、すみだに伝わる梅若伝説を現代的に翻案した盆踊り唄・江州(ごうしゅう)音頭「隅田川」を制作しましたが、今回はその音頭に、より親しんでいただこうと、江州音頭のルーツのひとつでもある万歳(まんざい)、日本各地にある万歳の中から秋田県秋田市の秋田万歳を実演・紹介しました。秋田万歳は正月から春先にかけて家々を門付して歩き、家を讃え、人々の長寿・繁栄・ご多幸を祈念する放浪の祝福芸。所望があれば座敷に上がり、儀式万歳全十二段の他、滑稽な噺やこっから舞、民謡なども実演するというもの。
さらに時代を遡り、中世の白拍子(しらびょうし)とよばれた巫女のような芸人が歌い舞ったという今様(いまよう)という歌謡や、江州音頭「隅田川」と同じく、梅若伝説を元にした謡曲「隅田川」を岐阜県の能郷(のうごう)という集落に古くから伝わる節で味わいました。
次に時代を下って現在の隅田川周辺を歩いてみて制作したガットギター弾き語りによるポップソングを演奏しました。プリンス王子の制作する七五調(詩で七音・五音の順番で繰り返す形式)のポップソング(ボサノバの影響を混ぜることがオリジナル)と、江戸末期頃から起こったとされる江州音頭の旋律の聴きくらべも行いました。
そして、イベントのフィナーレは、サウンド面を新しくしたテクノ江州音頭「隅田川」によるディスコタイム!事前にテクノ風のバックトラックを制作し、当日はそのバックトラックの音源にのせて宇宙軒明星が生歌で音頭を歌い、参加者は色とりどりのライトに照らされて輪になって踊りました。
日々の暮らしのなかにある唄がどのような形でうたわれてきたのか思いを馳せる一日。参加者からは従来の民謡のコンサートとは違った角度での演出に、「知らない曲をたくさんきけてよかった」「すみだを知るきっかけになった」「区内では伝統芸能に携わって来られた先人が多くおられるので連携をとってみては」また海外からのお客様からは「歌詞がよくわからなかったが、リズムで感じた」などの感想が寄せられ、たのしみながら民の唄をきき、未来へとつなげてゆくという目標への第一歩を踏み出しました。(文責:北野留美)
<出演者/演目:
①斎藤ぽん(万歳師/イラストレーター“にゃんとこ”代表)/祝福芸・秋田万歳
②猫村あや(日本各地の祭礼や神事をカバーするバンド“儀式”メンバー)/民間伝承の歌(謡曲「隅田川」、今様、催馬楽、田植歌)
③プリンス王子(ロックバンド“ミックスナッツハウス”ヴォーカル&ギター)/ギター弾き語り(オリジナルのポップソング)
④宇宙軒明星(盆踊り唄・江州音頭のグループ“モノガタリ宇宙の会”音頭取り) /江州音頭「隅田川」ディスコタイム