「すみゆめ踊行列―遊びをせんとや集いけむ」【2024年イベントレポート】
すみゆめ開始当初から、形を変えて開催されてきた「すみゆめ踊行列」。今回は1日目が「パフォーマンス&ピクニック」。2日目が「生演奏盆踊り」という構成で、屋外のイベント会場としても定着してきた隅田公園そよ風ひろばで開催されました。
▶︎すみゆめネットワークがゆるやかに集う「パフォーマンス&ピクニック」
1日目は、すみゆめ参加企画や地域で活動する団体など10組がパフォーマンスやワークショップ、出店などを行う前夜祭的な企画。盆踊りに使う櫓をせっかく立てるのだから、「もっといろんな形で使ってみよう」という考えを元に、内容を募ったそうです。
例えば、千葉大学墨田サテライトキャンパスで毎月活動しているあそび大学は、墨田区の町工場から出た廃材を使ったワークショップと、外遊びの体験。移動図書館のPARADISE BOOKSは、すみゆめのテーマやハロウィンにちなんだ絵本などを揃え、くつろいで読書ができるテント空間を提供。
両国を拠点に、音楽とアートを用いて場づくりの活動を行うトッピングイーストは、秋の草花や木の実など自然の素材を使ってロングテーブルを彩るワークショップと、持ち寄り食事会を開催。東京湾の魚を使った江戸前バーガーも提供していました。
いずれも、公園での過ごし方の可能性を普段から少し広げるような試みで、イベント目当ての方はもちろん、偶然訪れた方も楽しんでいました。
櫓やその周りでは、パフォーマンスやワークショップなどのプログラムが随時開催されました。すみゆめ参加団体SPUTNIKのダンスワークショップに始まり、こちらは舞踏ユニット「ヲズメ」によるパフォーマンス。
京島にあるけん玉とコーヒーの店muumuu coffeeは、けん玉や卓球を気軽に楽しめるコーナーを提供しつつ、世界レベルのけん玉プレイヤーによるパフォーマンスも披露しました。
締めは、京島で時報インスタレーション『夕刻のヴァイオリン弾き』なども行う小畑亮吾さん。軽やかなヴァイオリンの演奏に合わせて「櫓の上から8時のお知らせ」「明日はみんなで踊ろう」などと軽やかに歌っていました。
目当てのパフォーマンスが行われる時間帯に合わせて「見に来たよ」「また明日!」という感じで近くから訪れたと思われる方の姿も多く、この企画がすみゆめの各イベントや寄合、報告会のような場とはまた異なる形で参加者の交流の機会にもなっているように感じられました。
▶︎定着してきたすみだならではの「生演奏盆踊り」
「回を重ねるごとに認知度が上がってきていて、すみだの催しとして定着してきました。好きな時に踊って、休んで、自由に過ごしていいという、公共空間である公園で開催するのにふさわしい雰囲気になってきた。」と、当日の手応えを語ったのはプロデュースを担当した岸野雄一さん。
すみゆめではこれまでにも、さくらばし輪をどり(2019)、すみゆめ踊月夜(2022)、すみゆめ踊行列(2023)のような形で、盆踊りの本質を尊重しながら現代版にアップデートしたイベントを開催してきました。
(参考記事)
さくらばし輪をどり(2019)レポート
すみゆめ踊月夜(2022)レポート
すみゆめ踊月夜(2022)記録映像
すみゆめ踊行列(2023)記録映像
インタビュー「岸野雄一が考えるすみゆめならではの『祭り』」
全体的に生演奏・生歌を取り入れ、「炭坑節」「東京音頭」のように日本人の誰もが知る盆踊り定番の曲だけでなく、J-POPなどの現代的な選曲も行う。ゲストミュージシャンも数多く参加し、地域内外から多様な方が集まるなどの特徴があります。
「言わば東京の村祭り。東京には地方から来ている人が多いから、故郷に里帰りしたような安心した感じを提供したいと考えて、北から南までいろんな地域の民謡を取り上げました。秋田音頭の歌い方なんかは元々、ほぼラップ。だから、あっこゴリラ、いとうせいこうさんがピッタリです。夢が実現しました(笑)また、すみだの地産野菜である寺島ナスを題材とした「寺島茄子乃介音頭」や、東北の民謡である「虎じょ様」も、歌詞を変えてすみだヴァージョンにしてくれています。やはりご当地イベントということも強くアピールしたい」と岸野さん。
秋田音頭は、歌詞が一部オリジナルとなって披露されていました。
♪コラ 秋田出身 うちの母ちゃん 本日誕生日 アーソレソレ
♪ここ墨田で 皆の命もついでに祝わせろ ハイ キタカサッサー
♪コラ 墨田名物 北斎 大川 ツリーは空照らす アーソレソレ
♪俺も住んでる 昔も住んでた 人懐っこいの街 ハイ キタカサッサー
♪コラ 春は桜 夏は花火 秋はすみゆめ祭り アーソレソレ
♪皆の思い出 写メで切りとれ 命が映えまくり ハイ キタカサッサー
ばっちり浴衣を着て参加している人。そうでなくともこなれた服装と踊り具合から明らかになる盆踊り愛好家と思わしき人。普段着で荷物を手にしたまま、飛び込み参加したであろう通りがかりの人。日頃から公園で過ごしている様子の人…多様な人々が東京スカイツリーの麓で同じ時間を共有します。歌い手・演奏者と踊り手の掛け合いが様々なグルーヴ感を生み出す、あっという間の6時間でした。
橋本誠(はしもと まこと)
美術館・ギャラリーだけではない場で生まれる芸術文化活動を推進する企画・編集者。東京文化発信プロジェクト室(現・アーツカウンシル東京)を経て、2014年に一般社団法人ノマドプロダクションを設立。NPO法人アーツセンターあきた プログラム・ディレクター(2020〜2021年)。編著に『危機の時代を生き延びるアートプロジェクト』(千十一編集室/2021)。